第9話小百合と修二 同棲一年目


 小百合がピーマンを食べられるようになった事件から一年が過ぎたある日の出来事。

 また事件が起きる。


「今日仕事休みだから修二暇だよね。ちょっと買い物付き合ってよ」

「今日か。ごめん。ちょっと用事があっていけない」

「用事って何?」

「ちょっとな」

「休日はいつも家でぐうたらしてたのに、最近休日も外に出かけてるしすごく怪しいよ」

「そうかな? というか俺の事そんな風に見てたのか。失礼な奴だな。俺にもやることがいっぱいあってだな」

「わかった。一緒に出かけられないのは残念だけど、また今度付き合ってね。」

「また、今度な。あと最近趣味の時計とかに金使いすぎだから気をつけろよ。」

「趣味は遊べる範囲でやってるからいいんだよ。約束したから今度遊びに連れてってね。」

「おう」

 小百合は修二より準備を先に終えて、昼頃から家を出て街に向かう。


 街に着くと、小百合は趣味の時計を色んな店に立ち寄って探していた。

「この時計シンプルなデザインでいいな。値段どのくらいするんだろ?」

 ふと、その時計を見ると、金額は20万円を超えていて、ごくごく普通の会社員をしている小百合には手の届かない金額だった。

「またこの時計の為に貯金して仕事を頑張ろう!」


 そんな事を思っていた矢先。


 小百合が一人カフェで休憩していると、ビルの工事をしている現場から普段サラリーマンをしている修二が出てくる姿が見えた。

(なんでいるの?)

 動揺の隠せない小百合はすぐさま修二のいる工事現場の入り口に向う。

 気になった小百合は後ろから修二の肩を叩いた。


 肩を叩かれて後ろを向くと、小百合がいたことにびっくりした修二はどういう状態かわからずに固まった。

「なんでここにいるの?」

「え、とそれは……」

 修二はまだ言えなかった。彼女に時計をプレゼントしたかったなんて。

「もう少しだけ待っててくれ」

 小百合は普段はぐうたらな修二が、この時ばかりは真剣な目をしていて信用した。

「わかった。待ってる」


 小百合に見つかったあの日から修二は深夜も働きに行くようになる。


「ほんとに大丈夫? 無理しないで」

「無理する時も大事だから。行ってくる」

 小百合は修二が倒れないか心配になったが、あの目を思い出すと何も言い出せなかった。


 そして、1か月が過ぎたある日、修二は小百合には内緒で1人街に出かけた。


 そして時計店の前に着き、前から小百合に似合うだろうと思っていた20万の時計を買った。


 そして小百合の誕生日の日。

 二人は、一緒に料理を作って、テーブルでご飯を食べていた時だった。

「相変わらず、修二の料理美味いね」

「俺こう見えて料理得意だからな」

「私が褒めると、また調子に乗る。悪い癖だよ」

「ごめん。ごめん。嬉しいからついね。あ、そうだ。誕生日だろ。渡したいものがあるんだ」

「え、ほんとに! 何?」


 そして、修二は自分のカバンに隠していたこの間買った時計を取り出す。


「これ似合うと買ってきたんだ!」

 小百合は修二に渡されたプレゼントの入った箱を開けた。

「嘘!」

 それは、この間小百合が仕事を頑張って買おうと思っていた時計と同じ物だった。

「これ欲しかった時計だよ!」

「それならよかった」

「もしかして、これの為にバイトしてたの?」

「まあ、そんな感じだ。」

 修二は少し照れ臭そうな顔をした。

「ありがとう。大事にする」 

 こうして小百合は、修二に誕生日を祝われたのだった。


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短編中編道場~トクメイ太郎の修行場 トクメイ太郎 @tokumeitarou

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