『サンタクロオスの話』

 昨日サンタクロオスが来ました。

 夜中にふつと目覚めて、水を飲まうとキッチンに行つたら、サンタクロオスが水を飲んでゐました。

「やあ、水を飲ませてもらつてゐるよ」

 サンタは見たまんまのことを云ひました。一応、相手はサンタなので、「あ、どうぞ」と僕は応へました。サンタはコップに水を入れては飲み入れては飲みしてゐます。しばらく沈黙が続き、ちよつと困惑してきた頃、サンタが蛇口を閉め、水を飲むのをやめました。僕は《今だ》と思つて、

「まだクリスマスぢやないですよね」

 と聞いてみました。するとサンタは目を見開き、口をガバと開け一瞬凍りついたやうになり、直後なぜか腕時計をチラと見たり、挙動不審な動作をやつた挙句、

「マジで!?」

 と叫んで、ボワンと消えました。

(了)

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芥川龍ノリスケ短篇集 黒田一択 @kurodaittaku

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