本編

 これは俺が自作のオカルトグッズを販売してた時の話だったんだけどな。

 その日俺は何を思ったのか、自作のワラ人形をネットで販売したら以外と売れんじゃないかって思ってよ、試しにワラ人形作ったのよ。

 最初は確か20個ほど作ったな、そのあとワラ人形1個1000円でアマ〇ンとかメ〇カリとかに数量10個まで限定で販売したらさ、もうそりゃあ結構売れんのよ。

 いくら憎い奴がいてもわざわざワラ人形を作る暇がないからな、そんなときこそ俺のような暇人ならワラ人形作るくらい楽勝ってわけよ。

 自作のワラ人形がおもしろいように売れるからさ、もうばんばん作ったよ。

 作ってくうちに作るの上手くなってさ、ワラ人形の中に憎い奴の髪の毛を入れる用の箱仕込んだりとか、通常よりもさらにでかいワラ人形作ったりしてさ、もうそれが楽しくて楽しくて、しかも作れば作るほど飛ぶよう売れるわ売れるわ、気づけばバイトしなくても普通に暮らせる収入が手に入って、調子いい時だと月に売上が50万超える時もある。

 これはもう最高に良いビジネスだなって思ったよ、あのときまでは……。



 ワラ人形作り始めてから2年くらい経った頃かな、日に日に体がしんどくなって、病院に行っても原因は不明、次第にはワラ人形作る気力もだんだん無くなって、ワラ人形を1体も作らない日が多くなった。

 大きな病院で診てもらっても原因不明って結構やばいんじゃないかって思ってさ、どこか心当たりがあるか一人考えたのよ。

 でさ、俺は一つの結論にたどり着いたのよ。


 「これ、もしかしてワラ人形売ってるのとなんか関係してね?」


 んで、俺は知り合いの中に霊感ある奴(これ結構ガチで)がいたからさ、そいつをうちのマンションの部屋に招いて視てもらったのよ、そしたらさ。


 「ブフッ!」


 部屋入った瞬間笑ったのよそいつ、そんで俺は「なぜ笑うん?」て尋ねたのよ、そんで笑ったあいつが笑いながらさ。


 「いやだってめちゃおかしくて……おいおい隆樹お前ずいぶんヤバめでやらかしたな」


 そいつしばらくめっちゃ笑うのよ、俺はいまだに体がしんどいってのに(ついでに隆樹は俺の名です)。


 「おいそんなに笑うなよ、俺にとっちゃあ笑いごとじゃないんだよ、ほんとにマジで困ってんの」


 「ああわりいわりい、いやもうなんていうかもうおかしくておかしくて、お前にとりつく霊が俺でも見たことないくらいにめちゃおるもん」


 そいつの言ったことに俺は「えっ…?」て驚きつつも「何体いるんだ!?」て聞いたらさ、何体だったと思う?そいつが言うにはさ。


 「詳しい数はわからんけど、ざっと500は軽く超えてると思うぞ」


 「…えっ……えっ(2回目)……」


 そん時の俺はあまりの数に言葉も出なかったよ。

 しかもそいつはさらにさ。


 「お前、そのままだとあと2、3カ月で死ぬよ、これはガチで」


 「……マジか」



 あれから俺は知り合いのそいつの実家が寺だそうで、そのお寺の住職にお祓いを頼むことにした。

 普通は寺の住職だからって完全に幽霊が見えるわけではないらしいが、そいつの親父は霊視できる数少ない住職だそうだ。

 

 ほんと、知り合いにめぐまれたもんだよ。


 「君がそうなのかな……まあ、あんなに憑いてりゃそりゃそうか」


 「あのう住職さん、俺に取り憑いてる幽霊って何体いますか?」


 住職に尋ねると、うーんっと俺を凝視した後「あーなるほどなるほど」と言い、俺に口を開く。


 「956体だね、私ね、いろんな人見てきたけど、君のようなたくさん憑き物が憑いてる人初めてだよ」


 前聞いたのより多い。


 そして住職は続けて言う。


 「今ここで956体祓うの正直面倒くさいなあ……まあ祓うけど」


 「無理すんなよ親父」


 住職はため息を吐き、俺に視線を向ける。


 「ええと隆樹さん…でしたっけ?明日にお祓いを行います、一応何かあると命の危険があるのでまずはここに泊まっていきなさい」


 「あ、ありがとうございます」


 「明日に向けて私も色々と準備しますので、あなたも明日に向けて充分お休みなさってください」

 

 「はい、わかりました」


 その日俺は寺に泊まった。



 お祓いが行われるまでは一人部屋に閉じこもった。

 相変わらず体はしんどいわしんどいわ、しかも怠い、ワラ人形作る前の元気な体が恋しい気分だ。

 その後住職もお祓いの準備が整ったようで、俺は事前に言われた祓いの場へと向かい、敷いてあった座布団に座る。


 「では始めようか、あまり固くならず深呼吸して体をリラックスして……」


 俺は深呼吸して目を閉じてからはなんかふと意識を失ってしまった。


 

 あれから何時間経ったのだろうか、気づいたら俺は寝泊まりした所で寝てた。


 「あれ、俺、寝てたのか」


 起き上がると目の前には霊感ありの知り合いとその親父(住職)がいた。

 

 「体調はいかがかな?」


 住職が俺に問いかける。


 「んまあ、特に何も…前よりはマシになったような……」


 「そうか、なら大丈夫だな」


 「大丈夫?……それって、俺はもう……」


 「悪霊を祓えたようだな」


 住職のその言葉に俺は安堵した、こんなに安堵したのはめっちゃ久々だった。


 「ついでにお前さんに一つ聞きたいんだが、さすがに956も憑いてるのは異常だよ、なにか心当たりとかないかい?」


 「いやーそう言われましても、強いて言うならワラ人形作ってそれをネットで販売してたくらいかな」


 話を聞いた住職はすっげえため息と呆れ顔で俺を見ている。

 そして住職はおれにこう言った。


 「お前さん、956って数字、見覚えないかい、君がその作っていたというワラ人形と何か関係があるはずだ」


 「そう言われましても……あ、」


 その時俺はふと思い出したのよ。


 「俺が今までに作ったワラ人形の数だ」




 ※この小説の内容はフィクションです。

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ワラ人形を作ってネット販売してたとある男の話。 神町恵 @KamimatiMegumi

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