第10話 竿姉妹

 その後は早速部室で相棒の型取りを行った。


 シリコン剤の詰まった筒に怒張した相棒をぶち込む様は一時期流行った擬牝台モノを彷彿とされる。


 シリコン剤が固まるまで萎えるわけにはいかないのだが、そんな状態で勃起を維持するのは大変だった。


 俺の努力にも限界があり、美一と愛園先輩がパンチラサービスをしてくれたり、耳元でエッチなワードを囁いてくれたりと色々サポートしてくれたのだが、詳しく書くとBANされそうなのでここでは割愛する。


 途中から謎に二人が張り切り出し、危うくゴムの中にぶちまけそうになったりもしたのだが。


 ともあれ無事に型取りも終わり、その日はそれで解散した。


 美一との取引では、俺のディルドが完成してから愛園先輩のオナホを受け取る約束になっていた。


 ディルドが完成するまでの数日間は奇妙な時間だった。


 嬉しいような、恥ずかしいような、いてもたってもいられない、ソワソワとするもどかしい感覚。


 美一もその間は様子が変で、いつものように俺にウザがらみをしてくるような事はなかった。


 逆に、俺と目が合うと真っ赤になってどこかに逃げてしまう。


 それはそれでなんだか物足りない気もするのだが、同時にすごく可愛く見えた。


 そうそう、そ~いうのでいいんだよ!


 これぞ正しい青春の距離感!


 などと思っている間にディルドは完成し、ようやく俺も愛園先輩のオナホをその手にした。


 ……本当にこれでよかったのだろうか。


 最後にもう一度聞こうかと思ったのだが、美一の奴ホームルームが終わった瞬間猛ダッシュで帰ってしまい、結局聞けずじまいに終わった。


 まぁ、今更グダグダ言っても仕方ない。


 俺自身が何度も口にした通り、これは所詮オナホでシコるだけの行為であり、オナニーとセックスは全くの別物のはずなのだ。


 童貞の俺にそれを確かめる術はないのだけれど。


 いい加減俺の相棒も我慢の限界で、美一のあとを追うようにしてさっさと帰宅した。


 俺にとっても初めてのオナホである。


 オマケで貰った特製ローションをトロリと入れて早速使用感を確かめる。


 やはりこれについてもBANされるので詳細は語れない。


 愛園先輩のプライバシーもある事だし。


 それでも語れる所を語るなら。


 サイコー!


 ただその一言だ。


 比喩でなく、危うく腰が抜けるかと思った。


 なんなら相棒ごと持っていかれるかと思った。


 それくらい相性バッチリで凄まじい吸引力だった。


 こんなモノを知ってしまったらもう右手には戻れない。


 これ程オナニーが気持ち良いのなら、仮にこの先一生セックスをする機会に恵まれなかったとしても、絶望する事はなさそうだ。


 むしろ、一人でもこれだけ気持ち良いならと未来が明るく感じたほどだ。


 そんな思いを感想文にして伝えたら、愛園先輩は大層喜んでくれた。


「是非またテスターをお願いします!」

「俺でよかったらいつでも」

「ではさっそく。こちら二号機です」


 当然のように渡された似たようなオナホにふと違和感を覚える。


「……これ。最初のと形がちょっと違いませんか?」

「それはまぁ、二号機なので」

「そういう意味じゃなくて……。これ、愛園先輩のじゃないっすよね?」


 どこがどうとは言えないが、なんとなくそんな気がした。


 愛園先輩はキョトンとすると、面白がるようにニヤついた。


「いえいえ。これは100%間違いなく私で型を取った愛園モデルです」


 あまりにも自信満々な態度が逆に怪しい。


 それで俺はふと気づいてしまった。


「わかった。これ、美一のでしょ!」

「ふふふ。違いますって! これは絶対に私のですよ」

「笑ってるのがなによりの証拠でしょ! ったく! どうせ美一の奴になにか言われたんでしょ? 悪いけど、こいつは使えません」

「本当に違うのに。でも、そこまで言うなら仕方ありません。ちなみに理由を聞いても?」

「そりゃ……。一応あいつは俺とエッチしたがってるんで。こんな風にオナホで先にしちゃうのは違うかなと」

「ふむふむ。なるほどー」

「そういや美一の奴、なんか言ってました?」

「内緒です。気になるのなら本人に聞いて下さい」


 そりゃそうか。


 で、翌日学校に行くと。


「……二号機はどんな感じだった?」


 久々に美一の方から話しかけてきた。


「使ってねぇよ」

「え? なんで!?」

「白々しいんだよ! あれ、お前ので型取った奴だろ!」

「え? いや、違うけど……」


 キョトンとした演技は中々だが。


「騙されるか! 一号機とは形が微妙に違うんだよ! だからアレは受け取ってねぇから」

「……そうなんだ!」


 てっきり悔しがるかと思ったら、何故か美一は嬉しそうだ。


 と思ったらやっぱり怒りだした。


「って、なんであ~しのだったら受け取り拒否だし! あ~しとしたいって話やっぱり嘘だったわけ!?」

「嘘じゃねぇよ。お前がその気なのにアレで先に済ませるのはなんか違うと思っただけだ」


 その言葉に、美一の顔が見る見る赤くなる。


 カクンと俯き。


「……だったらいいけど」


 蚊の鳴くような声で答える。


 変な奴。


「それより俺のはどうだった?」

「デカすぎ! あんなん普通の人じゃ入んないし!」


 美一も言いたくてうずうずしていたという様子である。


「て事はお前は入ったわけだ?」

「ッ!? ま、マァ? あ~しは経験豊富なビッチだし? あれくらい超余裕? みたいな?」


 一瞬たじろぐと、周りに聞かせるようにわざとらしく告げる。


「それ。絶対自分の首絞めるだけだと思うぞ」

「余計なお世話だし! それより最初に貰った奴はどうだったし!」

「それは秘密だろ」

「なんでし! あ~しには聞いた癖に!」

「俺のアレの感想聞くのは別にいいだろ」

「だったらあ~しだって……。と、とにかく教えろし! 愛園先輩の使った感想!」

「だぁ!? 声がデカいっての!」


 ただでさえ誤解されている俺である。


 こんな話を聞かれたら間違いなく勘違いされる。


「じゃあ教えてよ。良いか悪いかだけでもいいから!」


 なんだかやけに必死だ。


 まぁ、謎に先輩に対抗意識を燃やしてから仕方ないか。


「それは勿論――」


 最高だった。


 なんて正直に言ったら美一は多分怒るだろう。


 そして、自分のオナホの方が絶対気持ちいいとか言って騒ぎ出すに決まっている。


「勿論、なに? すっごく良かった?」


 期待する顔で尋ねる美一に俺は言う。


「いや。先輩には悪いけど俺にはちっと小さかったな。キツいし狭いしで全然気持ちよくねぇ」

「はぁ!? そんなわけないし!」

「なんでお前が怒るんだよ……」

「それはだって……。あ、あんな良い先輩バカにされたら頭にくるでじゃん!」

「別にバカにしてねぇよ。ただの事実で身体の相性の話だし。こればっかりは仕方ないだろ」

「そんな事ないし! 絶対何かの間違いだし! 多分先輩が間違って小さく作っちゃったとかだし! やり直しを要求します!」

「なんでだよ!?」

「なんでも! 女のあーしには分かるの!」


 なんだそりゃ。


 意味不明だが、こうなると頑固な美一である。


 仕方なく事情を話すと、愛園先輩はニヤニヤしながら新たに作り直した三号機を俺に渡した。


 そもそも一号機が小さかったって話自体嘘だったので申し訳ない。


 そして後日。


「ね? アレなら問題なかったでしょ?」

「……いや、まぁ。入る事は入ったがやっぱりちょっと小さかったな」

「そんなぁ!? ちょ、ちょっとくらい小さい方がガバガバよりもいい筈だし!?」


 まぁ、それはそうかもしれない。


 実際三号機もかなり良かったし。


 てか、なんでお前はそんなに愛園先輩のオナホを庇うんだ?


 それにしても不思議である。


 一号機は丁度良かったのに修正したはずの三号機は小さかったのだ。


 なんとなく中の雰囲気も変わっている気がする。


 今度こそ本当に手違いか?


 そう思って愛園先輩に相談したら。


「仕様なので問題ありません」


 との事だった。


 まぁ、型を取ったと言ってもアレコレ手直しをするだろうし、そんなものなのかもしれない。


 でもなんとなく、一号機と三号機は全くの別物って感じがするんだよなぁ……。



 †



「これで私も美一ちゃんと竿姉妹ですね」

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もしかして俺、エロ漫画の世界に転生しちゃいました? いいえ、ただの勘違いです。 斜偲泳(ななしの えい) @74NOA

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