『釣りについて』
小田舵木
『釣りについて』
釣行は賭博に似る―
これは。数回釣りに行っただけの私が考えた
…説得力がないって?まあ。そりゃそうだ。
だが、釣りというのは。驚くほどギャンブルな趣味なのだ。
そも。だだっ広い海を相手にするのだ。
これだけで。なかなか分が悪い。
そして。更に。その海の中に居る魚群を探らなくてはいけない。
魚群は。海の状態、天候、潮目…様々な条件に影響される。
私は。釣りに行く時。
タイドグラフ、海面水位表を指標にしている。
ぶっちゃけ。海のど素人である私が参考に出来る指標なんてそう多くはないのだ。
さて。今日。2月11日は大潮である。
私は。昨日辺りから釣りに行きたくてソワソワしている。
今は。海水温が低いせいなのか釣れない…ここ2回の釣行は坊主であった。
だが。今日こそは。なんとかなるような気がしているのだ。
これは根拠のない意見である。だが。何となく期待は高まっている。
…正月に釣れたんだから。今日くらいの気温ならどうにかなるような―そんな気がしている。
私のホームグラウンド…と言うかよく行く釣り場は福岡市の海っぺたにある。
前にも別のエッセイで書いたが、奈多漁港である。
そこは。駅からのアクセスも良く、車も着けやすい。
だから。3連休のど真ん中の今日、そして大潮の今日は。混雑が予想される。
ああ。それを考えると。釣りに行きたくなくなる。
私は。家族連れの釣り客とカップルの釣り客が死ぬほど苦手なのである。
そも。子どもが釣り場に居ると。釣り糸を垂らしながら煙草が吸えないじゃないか。
それに。ガキは人の釣果を見て、クソ失礼な事を言いやがるのだ。
…私は子どもが苦手だ。どう相手をして良いのか分からない。
釣り。
釣りの何が私を魅了するのか?
それは―魚である。
私は釣り自体を楽しんでいるのではない。
釣れた魚を食うことを楽しみにしているのだ。
過去の釣行では。ママカリとアジを釣っている。
ママカリは小骨が面倒なので、唐揚げに。
アジはアジフライかなめろうに。
うん。想像しただけで涎が出てくる。
私は釣り自体はそう好きではない。
手が死ぬほど不器用なので、ノット…糸を結ぶのが苦手なのだ。
それに。釣りをしていると必ずと言って良いほどにライントラブルに見舞われる。
ライントラブル…リールの辺りで釣り糸がゴチャゴチャになるのだ。
アレが起こると。貴重な釣りの時間が少なくなってしまう。
でも。私はここ最近、暇を見つけては釣りに行っている。
なんなら。仕事を昼終わりに設定して、仕事上がりに釣行している。
…これはハマってると形容しても良いのではなかろうか。
私が釣りを始めたきっかけは正月に遊びに来た友人である。
友人は福岡に来て、1日で街に飽きたらしく。
さっさと釣りを始めてしまった。
それに付き合い、私も釣りを始めたのだが。
3回目の釣行でフィーバーを起こし。そこから病みつきになってしまったのである。
一度フィーバーを味わってしまった人間は。味をしめる。
私は二度目のフィーバーを一人の釣行の時に経験した。
アレは。楽しかったなあ。釣り糸を垂れれば。魚は釣れた。
魚が針にかかり、竿がブルブルッと揺れる瞬間。アレはなんとも言い難い。
キたっ!と思わず口に出てしまう。
現在時刻は3時26分。
今日の電車の始発が6時前である。釣り場には7時前には到着する予定だ。
まだ3時間前だと言うのに。私はソワソワしっ放しである。
そもそも。今日釣りに行く為に。昨日は20時には寝てしまった。
これじゃまるで。子どもみたいである。
だが。ここ数年、ハマれる趣味がなかったので。
私は久しぶりにウキウキとした気分を味わっている。
これは中々良い。人生に張りが出る。
ま、ギャンブルみたいな趣味だが。
『釣りについて』 小田舵木 @odakajiki
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