ステラ

火猫

第1話 結末は後日

「はぁぁぁ…」

私は今世紀最大になるであろう、溜め息を吐いた。


「前髪が…はァァァァァァァ、切りすぎた」

そう、女子高生の命とも言える前髪を切り過ぎてしまったのだ。


昨日の夜にお風呂に入ったまでは良かった。

ふと鏡を見たときに魔が刺してしまった。

『ちょいバランス悪いな…切り揃えたら可愛くなるんじゃね』


そう、私は身の程を知らなかった。


[バツん]


切り揃えたと思った、その前髪は…パッツン前髪となってしまったのだ。


朝になれば良い感じになるんじゃね?


そう思った時期もありました…目覚めて一発目、鏡を見たら現実見させられたけどね!




憂鬱な気分で学校に向かう。


うちの学校は帽子はNG、当然付け毛…ヘアウィッグなどもってのほか。

カーディガンだって学校指定じゃなければ生活指導されてしまい、内申に響く。


私はオデコに手をやりつつその日を過ごした。


やっと最後の授業が終わり、ショートホームルームも乗り越えた。


さっさと帰ろうと思ったら後ろから声をかけられた。

入学してから仲良くなったモコちゃんだった。


「話があるの…放課後、体育館脇に来て」

言葉少なにすぐ立ち去った。


え?まさか…この前髪にひとこと物申すとか、そんな事?

思い出せば確かに彼女とは髪型談義をした記憶がある。

すげぇ馬鹿にされんじゃないか?

そんなマイナスな気持ちで指定された場所に向かった。


体育館脇は他人にあまり知られたく無い告白や悪口を言ったりする絶好の場所で有名だった。


彼女と対面した私はゴクリとのどを鳴らす。


「あのさ」

彼女は切り出した。私は身構えた。


「帽子みたい…」

「はぁ?」


な、なんだってー!

とその場で声を張り上げなかった自分を褒めてあげたい。


言うに事欠いて…前髪がぱっつん過ぎて帽子みたいとは、言い過ぎだよ!

あまりにも真剣に言う彼女に私はキレた。


「い、今はダメかもしんない。けどさ!時間立てばマシになるよ!長い目で見守ろうよ!」

私は張り裂けんばかりに声を上げた。


確かに彼女は常日頃からオシャレでメイクも派手じゃ無いけど元が良いから映えるし、お母さんが美容師らしくて髪型も手入れが行き届いている。


私なんかよりも色々恵まれていて、正直羨ましい。


だけど、その言い方は無いよ!たった一回のミスじゃない?それを…そんな一言で。


「私だって頑張ってるの!貴女の見えない場所でもね。だから…」

その瞬間、彼女は涙を流した…そんなに帽子みたいなのが、涙を流すほどダメなの?

え?一体なんなのよ!


キッと彼女を睨んだ…すると私の両手を握りしめて更に号泣。

あまりの変化に私は慌ててフォローした。


「も、もしもどうにもならなかったら…手を貸してもらえないかな。私も何かあったら手を貸すから」

これならWin-Winよね、私を馬鹿にしたんだから貴女も手を貸してちょうだいな。


「うん、うん。ありがと」

彼女はまだスンスン鼻を鳴らしてはいるが納得してくれたようだった…私が譲歩したんだから当然よね!


「私も頑張りますわ!あら?前髪切り過ぎたの?」

改めて私を見た彼女は繰り返すように言ってきた。


ちょっとぉ!ダメ出しは一回で十分よっ!




そして最大の変化は、その翌日だった。


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ステラ 火猫 @kiraralove

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