1年後
「あれ、ここの自販機なくなっちゃったんだ」
「自販機?」
「僕、ここでよくメロンクリームソーダ買ってたんだよ」
「そんなの売ってたの? カラオケでしか見ない飲み物じゃん」
「うん。家族には不評だったんだけどさ。僕は好きだったんだよねぇ」
「へぇー。ちょっと飲んでみたかったかも」
「うーん。でも、ここ以外で見かけたことなかったんだよねぇ。ちょっと残念。
――でも仕方ないか。最後に買った時、なんか
ねぇ、知ってる?
私ってば、少しの間うたた寝してしまっていたようなの。でも目を覚ましたらびっくりよ。私ったら随分スリムになっちゃって。あんなに真っ赤だった体も銀色になっちゃって。あれかしら。最近よく聞くシルバー世代というやつなのかしら。いやね。私も随分、歳をとったわ。でもね。体は若い頃のように軽いのよ。それ以上かしら。
あら? 随分目線が高くなって気付かなかったけれど、下を歩いているのはメロンクリームソーダの彼じゃないかしら。あらあら。女の子と一緒に歩いて。ふふっ、いいわね。
あら? あそこにいるのはスポットライトの彼じゃない。随分背が低くなったのね。歳をとったからかしら。ううん。違うわね。そんなことより。また聞いてほしいことがあるのよ。
ねぇ、知ってる?
私みたいなネジネジの体で。でもそこらの子より軽やかでスリムなシルバー世代。頑張るこの一軒家をそっと支えてあげる女ってね。ネジっていうらしいのよ――――
【Fin...】
「母さーん。みんながカードゲームで遊びたいって言うから、お金預かって来たんだけどさー。どこならいいカード出んのかなー」
「えぇ? もーっ。あんたってばまたパシられたのね?」
「そんなんじゃねぇしー。俺は頼られてんのっ!」
「そーお? ならいいけど」
「あ、あとさっ!
家新しくなったしっ、みんな呼びたいんだけどっ! いいっ?」
自動で販売する機械の戯れ言葉 わしゃまる @washawasha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます