寂寞

おかぴ

寂寞

寂寞(せきばく)


○貸本屋『糸巻堂』


糸巻堂「……ふぅ。ただいま。相変わらず本の仕入れは重労働だな」


糸巻堂「春になってあったかくなったし、ちょっと暑いな……」


糸巻堂「清太郎? いるのか清太郎?」


糸巻堂「……いないか」


糸巻堂「仕方ない。自分で本をしまおうか」


(SE:ドスン、という重い荷物を床に置く音)


糸巻堂「これはー……純文学だから、あの位置か」


糸巻堂「……? 純文学のところに江戸の頃の風俗の解説書が……またあのアホか。本を返すときはちゃんと分類別にしろといつも言っているのに……」


糸巻堂「ん……位置が高くて手が届かない……ッ」


(SE:スッ……て感じの、本棚から本を取る音)


糸巻堂「……ん」


清太郎「これでいいですか? 先生」


糸巻堂「いたのか清太郎。ありがと。助かった。今戻ったのか?」


清太郎「お客様もいなかったので、洗濯物を取り込んでました。で、戻ったら先生が必死に背伸びして本を取ろうとしてましたから……」


糸巻堂「本をちゃんと元に戻さないのは困るな。どうせ大滝だろう。今度張り倒してやる」


清太郎「(苦笑しながら)相変わらず大滝さんには厳しいですね。でも、ここらの本は全部ぼくが片付けましたし、ぼくの責任もあるのかも。先生が取りやすいようにもっと低い位置に置けばよかったですね」


糸巻堂「いいんだよ。そういうことは全部大滝のせいにしておけば」


清太郎「大滝さんがかわいそうです」


糸巻堂「清太郎は相変わらず優しいな」


清太郎「育ててくれたのが先生と大滝さんだからです」


糸巻堂「そこで大滝の名前が出るのがお前の優しさだよ」


清太郎「先生が大滝さんに厳しいだけですって」


糸巻堂「そうか?」


清太郎「はい」


(SE:『りんりーん』て感じの呼び鈴の音)


清太郎「お客さんですね。ぼくが対応します」


糸巻堂「うん。よろしく頼む」


清太郎「はい」


清太郎「はいはーい。いらっしゃ……て、キヨ警部補!」


 キヨ「おうガキぃ! 今日も元気に腹筋してっか!?」


清太郎「ハハハ……最近は型の鍛錬の方に集中してまして、筋トレの方はあまりー……」


 キヨ「だめだぜガキぃ。体幹と基礎体力は大切だぞ?」


 キヨ「ところで、糸巻堂はいるか?」


清太郎「はい。せんせーい!」


糸巻堂「んー? どうしたせいたろ……て、なんだ客って警部補か」


 キヨ「おう。またお前らに頼みたいことがあってな」


糸巻堂「ほう」


清太郎「立ち話もなんですから、席に座ってください。ぼくはお茶の準備をしてきます」


 キヨ「おう。サンキューな~ガキ~」


糸巻堂「イラッ」


 キヨ「お? どうしたんだよ糸巻堂?」


糸巻堂「なんでもない。座って話そうか」


 キヨ「? まぁいいか。んじゃ遠慮なく座らせてもらうぜー」


糸巻堂「うむ」


 キヨ「今度、上野の美術館にヨーロッパから『リーゼの聖骸布』ってお宝が来るのは知ってっか?」


糸巻堂「ユリアンニ教の至宝だな。あれの現物を間近で見られるということで、私と清太郎も来日を楽しみにしている」


 キヨ「それで、それを奪うって犯行声明が出されたんだ。相手は翁仮面さまじゃねーが、一応警察としては無視できねー。お前たちも力を貸してほしいんだけどさ」


糸巻堂「んー……」


糸巻堂「私が行くのはやぶさかでない。だがなぁ……」


 キヨ「あン?」


糸巻堂「しかし、清太郎を連れて行くのは……」


 キヨ「あのガキがどうしたんだよ?」


糸巻堂「ガキではない清太郎だ。……しかし、まだ早いというか危険というか……」


 キヨ「ぶぁぁぁぁ……(盛大なため息)」


糸巻堂「ん?」


 キヨ「保護者なのにっつーか、保護者だからっつーか……」


糸巻堂「?」


清太郎「お茶淹れました〜どうぞ〜」


 キヨ「おうガキぃ。サンキューな!(ズズッ)」


糸巻堂「ありがとう清太郎」


清太郎「いいえ。またお仕事ですか?」


 キヨ「まぁな。テメーも来るだろ?」


糸巻堂「警部補! 清太郎にはまだ早いと!!」


 キヨ「うっせぇよ糸巻堂。どうだガキ?」


清太郎「いいですよ。先生一人だと心配ですし」


 キヨ「よっしゃ決まりだ! んじゃお前ら、頼むぜ!!」


清太郎「はい!」


糸巻堂「はぁ……やれやれ……」


 キヨ「なぁ糸巻堂?」


糸巻堂「ん? なんだ警部補?」


 キヨ「大事にするのも構わねーが、ちゃんと見てやれや」


糸巻堂「……うるさい」




○数日後 貸本屋『糸巻堂』


糸巻堂「んー……」


清太郎「せんせー? この前先生とぼくで解決した事件のことが新聞に……て、先生?」


糸巻堂「んー……」


清太郎「どうかしました? 朝からずっとここで考え込んでますけど」


糸巻堂「……やはり私はまだまだ未熟だなぁと思ってな」


清太郎「へ?」


糸巻堂「最近は特にそう思う。自分ではだいぶ成熟したと思っていたのだが……まだまだ先代には遠く及ばないとは……」


糸巻堂「清太郎」


清太郎「はい?」


糸巻堂「三日後に大切な客が来る。そのときに茶会を催したいのだが」


清太郎「はい」


糸巻堂「その時の茶会のすべてを、私の名代として清太郎に取り仕切ってもらいたい」


清太郎「へ? でも大切なお客様なんですよね?」


糸巻堂「ああ。大切な客だ。私にとっても、清太郎にとっても」


清太郎「……」


糸巻堂「どうだ清太郎? 自信がないなら別に私がやってもいいが……」


清太郎「いいえ。やります」


糸巻堂「即答か……分かった。清太郎にすべて任せるよ」


清太郎「はい。がんばります」


糸巻堂「ただし、一つ条件がある。その客は、我が家に代々伝わる曜変天目の茶碗を見たいとご所望だ」


清太郎「へ? 曜変天目の茶碗ですか? そんなの、うちにありましたっけ?」


糸巻堂「いや、私の実家にあるものだ」


清太郎「あ、なるほど」


糸巻堂「だから明日か明後日にでも私の実家に取りに行って欲しい。実家の方には私の方から連絡を入れておく。当日はその茶碗を使うことが、茶会の条件だ」


清太郎「それ以外は?」


糸巻堂「それ以外は好きにしてくれて構わない」


糸巻堂「ただし、私の名代で取り仕切るということは、糸巻堂の名を背負うということだ」


糸巻堂「清太郎が取り仕切って行うその茶会は、糸巻堂が取り仕切って行う茶会だということを、キチンと頭に入れておいてくれ」


清太郎「……」


清太郎「はい。先生の名を貶めないように、よいお茶会を開けるよう励みます」


糸巻堂「……」


清太郎「……先生?」


糸巻堂「なんでもない。よろしく頼むよ、清太郎」


清太郎「はい!」




○翌日 橘家お屋敷 玄関


清太郎「先生が話をつけてくれているそうだけど……ちゃんと話は通ってるかな……」


清太郎「しかし、大きなお屋敷だなー……玄関前のお庭だけでめちゃくちゃ広い……」


清太郎「こんにちはー! こーんにーちはー!」


(しばらくの間)


 女中「……はい。どちらさまですか?」


清太郎「突然の来訪、失礼いたします。糸巻堂先生の助手の清太郎です。先生の名代として、曜変天目のお茶碗を受け取るために参りました」


 女中「まぁ。あなたが怜華(れいか)お嬢さまの」


清太郎「はい。清太郎です。はじめまして」


 女中「はじめまして。橘家の女中です。こちらでお世話係を長年勤めております」


清太郎「ああ、では先生のお世話なんかもされてたんですか?」


 女中「もちろんです。生まれたばかりの頃からお世話させていただいておりますよ?」


清太郎「へぇ~……今日は忙しいのでムリですが、いずれ昔の話もお聞かせいただきたいですね」


 女中「いいですよ。もちろん」


清太郎「やった! ありがとうございます!」


 女中「ふふ……」


 女中「……」


 女中「そうですか……お嬢様が……」


(しばらくの間)


 女中「お話は怜華お嬢様よりお伺いしております。曜変天目の茶碗、ご準備出来ておりますのでお持ち帰りください」


清太郎「よかった! ありがとうございます!!」


 女中「……ただし、一つ条件が」


清太郎「……て、へ?」


 女中「私とひとつ、手合わせいただきたく」


清太郎「手合わせ?」


 女中「あなたも怜華お嬢様から新宮流組手甲冑術の手ほどきは受けておられると思います。その腕前、この私にお見せくださいませ」


清太郎「ちょっと待ってください。先生からはそんな話は聞いてないですよ? それに、あなたが怪我してしまいます」


 女中「私の身を案じてくださるなんてお優しい方ですね。それに、自分への自信もお持ちだ」


 女中「でも心配ご無用。これでも私は中国拳法を嗜む身」


 女中「さぁ。構えなさい」


清太郎「……やらなきゃだめなんですか」


 女中「もちろん。我が秘宗拳の妙味、とくとご賞味くださいませ」


 女中「……ハァアッ!!!」




○数分後


清太郎「……それでは失礼いたします!」


 女中「はい。お嬢様によろしくお伝え下さい」


清太郎「はい! お手合わせありがとうございました!」


 女中「こちらこそ。これからも精進なさってくださいね」


清太郎「はい!」


(しばらくの間)


 女中「お嬢様……よい子をお選びなさいましたね……」


 先代「曜変天目、無事に持ち帰ったようだな」


 女中「ああ大御所」


 先代「どうだった? キミから見て、彼は」


 女中「『あなたの拳はまっすぐで眩しいです』と言われました」


 先代「ほう」


 女中「誰かさんの若い頃そっくり。私が手出しできないところまで」


 先代「だから言ったろう? 新宮流組手甲冑術と秘宗拳は、そもそも相性が悪いと」


 女中「そうではなく」


 先代「?」


 女中「あの、こちらの気持ちを射抜くまっすぐな眼差しと、自分と相手を信じ切っている言葉……本当に、若い頃の先生そっくりです」


 先代「そうか。不思議なものだな……血は繋がってないはずなのに……まるで収斂進化か」


 女中「もちろん似てないところもありますよ? あの子は先生みたいにポンコツ脳筋ではないみたい。そういうところは、怜華お嬢様の指導の賜物なんでしょうね」


 先代「酷いなぁ真行寺くんは……」


 女中「ふふ……」


 先代「そうか……もう、そういう時期か」


 女中「はい」


 先代「……」


 先代「怜華は、複雑な気持ちだろうな」


 女中「ですね。……でも大丈夫。あの子なら……清太郎くんなら」


 先代「真行寺くんがそう言うなら、心配はいらんな」


 女中「はい」




○翌日 貸本屋『糸巻堂』


(SE:シュルシュル、と服を着て帯を締める音)


清太郎「……ふう。いつの間にか紋付きも自分ひとりで着られるようになったんだなぁ」


糸巻堂「清太郎? 準備は出来たかせいたろ……」


清太郎「はい先せ……うわぁ……先生、とてもキレイなお着物をお召しですね!」


糸巻堂「……」


清太郎「? せんせ?」


糸巻堂「あ、ああ。ありがとう……」


清太郎「いいえ。本当にとてもよくお似合いですから」


糸巻堂「清太郎も見違えたね。とてもよく似合ってるよ」


清太郎「ありがとうございます!」


糸巻堂「清太郎? 準備はもう大丈夫か?」


清太郎「はい。あとはその大切なお客様が到着すれば、いつでも始められます」


糸巻堂「そうか」


清太郎「そういえば、まだお客様のお名前を聞いてなかったですね。どちらなんですか?」


糸巻堂「そうか……そういえばそうだったな……」


糸巻堂「……では参ろうか。清太郎」


清太郎「はい。もうすぐお客様も到着なさるんですね」


糸巻堂「いや、すでに到着している」


清太郎「へ?」


糸巻堂「本日の茶会の客は私だよ、清太郎」


清太郎「へ……?」


糸巻堂「今日は清太郎が私をもてなす日だ。楽しみにしてるよ清太郎」


清太郎「……」


清太郎「分かりました。では先生」


糸巻堂「うん」


清太郎「これから茶室にご案内します」


糸巻堂「わかった」




○桜の木の下


清太郎「どうぞ先生」


糸巻堂「ああ。野点(のだて)か」


清太郎「はい。以前に先生と大滝さんとぼくの三人で、外でお茶を楽しんだ日が忘れられなくて」


糸巻堂「そういえば、そんなときもあったな」


清太郎「はい。今日はいい天気ですし風もないので。あの日と同じように桜を眺めながら、お茶を楽しんでいただこうかと」


糸巻堂「いい趣向だ。素敵だよ」


清太郎「ありがとうございます。……では先生」


糸巻堂「うん。失礼するね」


清太郎「はい」


(SE:畳の上の歩く音。あれば座る音も)


清太郎「お菓子をどうぞ」


糸巻堂「このお茶菓子……」


清太郎「はい。先生のご助力をいただいて、ぼくがはじめて作ったきんつばです」


糸巻堂「そっか」


清太郎「大滝さんにもお褒めいただいた逸品ですから、きっと大丈夫だろうと思いまして」


糸巻堂「そうだったね。……では、お菓子をいただきます」


(しばらくの間)


糸巻堂「……うん。あの頃と変わらず美味しい」


清太郎「ありがとうございます。……では、始めさせていただきます」


糸巻堂「はい」


(SE:お湯を汲む音とか、お茶を点てる音とか)


清太郎「どうぞ」


糸巻堂「お点前、頂戴いたします」


(SE:茶を飲むときの音(着物がこすれる音とか))


糸巻堂「……ふう」


清太郎「……」


糸巻堂「結構なお点前でした」


清太郎「ありがとうございます」


糸巻堂「うん……」


清太郎「……」


糸巻堂「清太郎」


清太郎「はい」


糸巻堂「合格だ。よくやった。素晴らしいお茶会だったよ」


清太郎「フゥ……」


清太郎「よかったです……緊張しました……」


糸巻堂「そうか。フフ……」


糸巻堂「……」


糸巻堂「なぁ、清太郎?」


清太郎「はい?」


糸巻堂「私は、あまりいい保護者ではなかったな」


清太郎「そんなことはありません!」


糸巻堂「……」


清太郎「先生と大滝さん……素晴らしい方々に育てていただいたとぼくは思ってます!」


清太郎「ぼくは、先生と大滝さんお二人に感謝してますし、尊敬しています! こんなに親しみやすくて、でも厳しいけど……でも、頼りになって、親しみやすくて……」


糸巻堂「フフ……親しみやすいを繰り返しているよ」


清太郎「あ、……すみません……」


清太郎「でも! ぼくはお二人とも尊敬して、慕っています!」


糸巻堂「そっか。ありがとう清太郎」


糸巻堂「……」


清太郎「……」


清太郎「先生」


糸巻堂「ん?」


清太郎「ひょっとして、代替わりの話ですか?」


糸巻堂「なんだ。気付いていたのか」


清太郎「はい。曜変天目のお茶碗を受け取りに行ったときから」


糸巻堂「そうか」


清太郎「はい」


清太郎「……駄目ですよ先生? ぼくに気を使わせて、ぼくの口から言わせるなんて」


糸巻堂「いや、申し訳ない」


糸巻堂「ハハ……」


糸巻堂「……」


糸巻堂「清太郎、こっちへおいで」


清太郎「はい」


糸巻堂「少し、かがんでくれるか?」


清太郎「はい」


(しばらくの間)


清太郎「ん」


糸巻堂「こうやって清太郎の頭を撫でてあげるのも、久々だな」


清太郎「そうですね。ぼくの背が伸びたから……」


糸巻堂「うん。いつの間にか、私の背も追い越したからな」


清太郎「はい。……懐かしいですね。先生の手」


糸巻堂「そっか」


清太郎「はい」


清太郎「……先生?」


糸巻堂「ん? どうした?」


清太郎「『糸巻堂』は、ぼくで四人目になります」


糸巻堂「うん。そうだね」


清太郎「ぼくで大丈夫でしょうか。先生たちが守り抜いてきた『糸巻堂』の名に、泥を塗るようなことにはならないでしょうか?」


糸巻堂「不安か?」


清太郎「はい」


糸巻堂「……おいで。私の清太郎」


清太郎「はい」


糸巻堂「……」


清太郎「……ん。こうして抱きしめてくれるのも、ホントに久しぶりですね」


糸巻堂「清太郎が小さい頃は、折に触れてよく抱きしめていたからな」


清太郎「はい。あの頃と変わらず先生は温かいです」


糸巻堂「清太郎も、こうやって見ると、あの頃のままだな」


糸巻堂「……清太郎?」


清太郎「はい先生」


糸巻堂「これからは、清太郎が糸巻堂を名乗っていくことになる」


清太郎「……」


糸巻堂「これから先、この名前の重さに押し潰されそうになるときもあるだろう。打ちひしがれて疲れ切ったとき、『糸巻堂』という名前に思い悩み、その名を捨てたくなるときもきっとあるはずだ」


清太郎「……」


糸巻堂「でも大丈夫だ。忘れるな。お前は、大滝が惚れ込み、三代目翁仮面も一目置く男だ」


清太郎「はい」


糸巻堂「何より、三代目糸巻堂の私が、お前ならと唯一認め、そして育てた男だ。誰も持っていない優しさと、私が与えた誰にも負けない力を持った男だ」


清太郎「……はい」


糸巻堂「だから泣かないで。清太郎なら、きっと大丈夫だから」


清太郎「はい先生」


糸巻堂「私はうれしいよ? お前が、他でもない清太郎が、この名前を継いでくれることが」


清太郎「……ありがとうございます。ありがとうございます、先生」


糸巻堂「だからもう泣かないで。いい男が台無しだよ清太郎」


清太郎「先生も、ヒグッ……もう、泣かないでください」


糸巻堂「私はいいんだ。女は泣いていいんだよ。いい女は泣くものだ」


清太郎「プッ……そうですね。先生、いい女ですからね」


糸巻堂「うん」


清太郎「……ありがとうございます先生」


糸巻堂「うん」


清太郎「先生の清太郎は、先生から名前を受け継いで『四代目糸巻堂』として、励みます」


糸巻堂「うん」


糸巻堂「……大丈夫だよ清太郎」


清太郎「はい」


糸巻堂「私のかわいい清太郎なら、きっと大丈夫だよ……」




○翌日 貸本屋『糸巻堂』


(SE:りんりーんって呼び鈴の音 そのあと激しいノックの音)


 キヨ「たのもー! たーのーもー!! ノックガンガンッ!!!」


(SE:ドアが開くガチャリって音)


清太郎「ああ、キヨ警部補! こんにちは!」


 キヨ「おうガキぃ! 今日も元気に腹筋してっか!?」


清太郎「はい! 今朝はしっかり筋トレやって、体幹鍛えておきました!」


 キヨ「上等だぜガキ! 今度はアタシが筋トレ付き合ってやんよ!」


清太郎「ハハハ……遠慮しときます……」


 キヨ「なんでぇ湿気てんなぁ……っとー……」


清太郎「ああ、先生は今日はお留守ですよ」


 キヨ「そうなのか?」


清太郎「はい。なんでもご実家の方に用事があるとかで」


 キヨ「マジかよ~……今日も糸巻堂に依頼があって来たんだけどよー……」


清太郎「ああ、先生はお留守ですけど、糸巻堂ならいます」


 キヨ「……ふぇ? どこに?」


清太郎「目の前に」


 キヨ「……へ?」


清太郎「まだ正式な襲名は先ですが……あー、ゴホン」


清太郎「こんにちはキヨ警部補。ぼくが四代目、糸巻堂です」



おわり


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

寂寞 おかぴ @okapi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ