第16話 二人でなら

 付き合いだしてから数年。俺たちは同じ大学を受けて無事合格し、お互いの家から電車に乗って大学に通学していた。授業の時間が違ったり別の授業を受けていたりで全部一緒というわけにはいかなかったが、昼の時間は学食で弁当を食べて話しているだけでもそれなりに幸せだった。


 そんな俺たちは大学三年生。もうそろそろ卒業に向けて忙しくなるころだ。俺は、そんな冬美と話しながらとあることを考えていた。


 同棲。あれからお互いの両親に改めて挨拶して親公認の仲になってからはお互い喧嘩したりもしたけどおおむね順調だ。あれから別大学に行った友樹と華絵とたまに会って飲んだりして、話しているうちにその構想はあった。


 問題は、それをいつ切り出すかということ。冬美は実家暮らしを満喫しているみたいだし、無理に親元から話すのは気が引けた。そうしてずるずる数か月が経過し、三月。春休みに突入していた俺たちは、俺の部屋でまったり過ごしていた。


 どうする? 言うなら今か? こんな絶好の機会、なかなかないぞ。お互いバイトもしているから休みが合うなんてたまにだし。


 隣に座る冬美をちらちら見ながら考えをまとめていると、ふふ、と冬美が笑って俺のほうを向いた。


「どうしたの、孝之。話したいことがあるなら聞くよ?」


「え、あ、うん。えーっと」


「どうしたの? 孝之にしては歯切れ悪いね」


 くすくすと口元に手を当てて冬美は笑う。言えない。同棲しようなんて。まだ早いとか言われたらへこむし。


 ええい。男は度胸とか言うし。言ってみてだめなら長い目で考えて決めればいい。


「あのさ」


「うん」


「同棲、しないか? あ、もちろん冬美が嫌だったらいいんだ! 冬美の意見が一番だから……冬美?」


 冬美はぽかんとしてから、真っ赤になってわなわなと口を震わせる。怒らせただろうか……。


「ど、同棲? 孝之と?」


「う、うん。嫌ならいいんだ。長い目で考えたほうがいいこともあるだろうし……」


「それ、すごくいいと思う。というか、私もしたいと思ってた」


 冬美の意外な回答に俺は固まる。いいの、か? というか、私もしたいと思ってたってことは、同じことを考えていたってこと? 俺が固まってる間に、冬美は話しだす。


「孝之、引くかなあって思って言えなかったの。私もそろそろ就職に向けて家を出る準備をしなくちゃなあって思ってて、その……結婚したいなって、思ってたから。孝之と。だから、同棲いつ切り出そうかって迷ってたの」


 同棲だけではなく、結婚まで!? いや、俺も冬美と結婚したい。でも、いいんだろうか。両親に挨拶は済ませているからといって、そこまで話を飛躍させても。冬美がいいなら俺もいいけど……。


「結婚まで考えてたのか」


「い、嫌だった?」


「全然! むしろ、冬美がそこまで将来のこと考えてるとは思ってなかった。結婚、かあ。そうだよな、同棲してうまくいったら考えるよな、結婚」


 俺が感慨深そうに言うと冬美は恥ずかしそうに真っ赤になる。そんなところがかわいくて、肩を抱く。


「とりあえず、同棲から始めよう。それからでも遅くはない」


「いいの?」


「冬美がいいんだし、俺も考えてたからオッケー。そしたら、春休みのうちにいろいろ決めちゃおう。これからもよろしく、冬美」


「うん! これからも、よろしく!」


 俺が小指を出すと、冬美はきょとんとしてから笑顔で俺の小指に自分の小指を絡ませる。


 これからどんなことが待ってるかわからない。でも、俺たちは乗り越えていけるだろう。あの復讐劇を乗り越えた俺たちなら。


 願わくば、この幸せがお互いが死ぬまで続きますように。








 以上で本作は終わりです。いかがでしたでしょうか?

へたれな作者でごめんなさい。

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俺を振った幼馴染を痩せて復讐するためにイケメンになる。そして俺は、学校一の美少女幼馴染の秘密を知った。 ぷにたにえん @punitanien

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