爆撃の都市

横浜暇人

第1話

爆撃の都市


ドーーーン!

戦争が始まって大きい爆弾が都市の隔壁で破裂した。

住人達は恐怖でしゃがみ込んだり、走り回ったり、木にしがみついたり、自分の子供に必至に何か説明していたりパニックだ。


それが最初の日は頻繁に起こった。

ドーーーン!

ドーーーン!!


防壁があるから都市に被害は無かったが


(外側の海に面している漁業の街は被害が甚大で大勢が巻き込まれ被害が出てしまった)


皆眠れぬ夜を過ごした。

次の日も爆撃の炸裂音がこだました。

ドーーーン!

また次の日も

ドーーーン!


敵のミサイルは遥か遠くから撃ち込まれて、無尽蔵とも思える物量だった。


だが、人間はどんな環境でも慣れるものらしい。


初日は怖がっていた住人達も1週間もすれば普通に生活をしだし、毎日起こるのですっかり慣れてしまった。夜も眠れるようになった。


「あ、あの音は黒色火薬だな」

今では爆撃の音で火薬の種類が判る者も出てきた。


いつしか

爆撃体験できる都市として観光名所になってしまった。


外から来た観光客が酒場で住人に聞いた。

「怖くないのか?」

「怖いさ」

「都市から逃げ出そうとしないのか?」

「逃げるのは他所から来た住人だけだよ」

「防壁が破られる可能性はあるのか?」

「それは…あるだろうな」

「そうなれば死んでしまうよ」

「そうだな。でも人間なんて死ぬ時はあっさり死ぬもんさ」

(達観しているな)観光客は思った。

ドーーーン!

「ひっ」観光客は驚いた。

住人は静かに酒に口を着けた、少し哀しそうな表情で。


やがて半年が過ぎて爆撃は週に1回になり

1年が過ぎ爆撃は月に1回

になり

10年が過ぎて3ヶ月に1回になった。


爆撃の音が炸裂する都市で私達は今日も暮らしている。

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爆撃の都市 横浜暇人 @yokohamahimazin

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