第3話 恋、ひらり
真理と彩花は似ているところがあり、趣味も同じであることが多い。好きなものが似ている。そんなふたりは偶然というよりは必然的に同じ人を好きになってしまった。
真理が彩花に似ていても、彩花が真理に似ていても、ふたりは気にしなかった。
真理と彩花の違いと言えば、いじめを受けているか否かが大きい。雰囲気の違いだろうか、ふたりにはそこに差がある。
「ふたりで太一君に告白してみよっか」
真理は校庭を見おろしながら言った。
「私は嫌だな。真理に負けてると思うし」
彩花は心の底からそう思い、そう言った。
「わからないよ、太一君の好き人なんて。だから一緒に告白してみよう? 当たって砕けろだよ、彩花」
「砕けたくないよ」
笑ってごまかそうとする彩花の手を引っ張り、校庭に向かう真理。
「部活終わりに告白しよう。ね?」
「う、うん」
仕方なく彩花は頷いた。
夏の兆しが見える六月。
すべてがオレンジ色に変わっていく夕暮れ。暑さがやわらいで、少し涼しい風がふたりの間を通り抜けた。
陸上部の部長らしき人が号令をし部活を終わらせた。タオルで汗を拭う太一をふたりはじっと見つめていた。
そして太一がやって来た。
「太一君、ちょっと待って」
「何?」
太一は人当たりの良い笑顔を見せた。
「私たち、太一君の事が好きです! どちらか好きな方の手を握ってください!」
真理と彩花は太一に手を差し出した。
困ったような顔をし太一は「ごめん。俺、好きな人いるんだよね」と言ってその場を後にした。
真理は突然笑いだし「砕けちゃったね」と彩花に言った。彩花はうっすらと涙を浮かべ「そうだね」と返した。
翌日、屋上でフェンス越しに二人は校庭を眺めていた。
「太一君は見る目ないよ。こんな美少女をふるなんて」
真理は彩花にそう言った。
「でもなんかスッキリした」
彩花の目は空を見つめていた。
彩花はシャボン玉をふくらまし、空へと浮かべた。そして真理もシャボン玉をふくらまし、空へと浮かべた。
ふわふわと空に浮かぶシャボン玉。浮かび、パチッと割れるシャボン玉。それぞれの想いが散っていく。
二人の儚い恋がひらりと落ちていく。
おわり
恋、ひらり とろり。 @towanosakura
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