第3話 初めての都会、初めてのクラス

世界的に魔術が使われ始めた時代。

その中でも最も魔術と科学が発展した都市。

それがこの「魔術都市」である。

「…うわぁ…ぜ、全部がおっきい…」

ここに1人、新しく転勤してきた先生がその都市に足を踏み入れた。


「すごいな、これ。全部、建物だよね…?」

田舎からまる二日かけて来た転勤先は、今まで先生を勤めてきた片田舎の都市とは比べ物にならない程のものだった。

人口密度、住宅数、ビルの高さまでどれをとっても負け無しだ。

(これから、どんな教師生活になるんだろう。

 いや、これからも生徒を守る先生でいないと。)

そう意気込んで、街に一歩踏み出した。


慣れない町並みを歩き、予定していたアパートに到着する。

「……なんか、ちょっと合わない」

そのアパートはこの都市ではじめてのコンクリートを使用したアパートだった。

片田舎から来た身からすれば、2日前の話だが懐かしい気持ちになった。

懐かしさを味わいながらアパートの大家の部屋の扉のチャイムを鳴らす。

ピンポーンと音が鳴り、続いてくぐもったチャイムが聴こえる。

「はい」

暫く待って、大家であろうお年を召した女性が扉を開ける。

「あっ、はじめまして。このアパートの一室を借り

 る予約をしていた……」

「あーああーあ!あの!はいはい、存じ上げてます

 よ」

どうやら話は早いらしい。

「それで、これをどうぞ。私がここに来る前に稼い

 でいたところのお菓子です。」

持っていた紙袋から田舎らしいパッケージの菓子箱を取り出し、大家に手渡す。

「あらぁ!まぁ!懐かしいねぇ、このお菓子。」

「あら、知ってるんですか?」

「えぇ。私の故郷です。」

「え、そうなんですか!」

そして更に世界は狭いらしい。

それから、大家といくつか会話を交わし、打ち解けたのだった。

「それじゃ、部屋に送ってくかねぇ」

「ありがとうございます」

大家がマスターキーを取り出し、えーと203、203……とカギを探し始め、カギを見つけるとついてきてねぇと歩き出した。

「にしても、珍しいねぇ。なんのお仕事だい?」

階段を登る最中も話をきりだしてくる。

「先生をやっています。」

「へぇ、先生を!」

たわいもない会話をしながら階段を登り、203号室の前に着く。

大家はマスターキーを差し込み、ドアノブを回す。

ギィ……と古めかしく懐かしく音がなりながらドアが開く。

「今日からここがあなたのお部屋だよ。丁寧につか

 ってあげてねぇ」

「わかりました。」

大家と分かれ、部屋に立ち向かう。

一步、玄関に足を踏み入れる。

畳の香り、木材の質感、懐かしい感覚が五感を揺さぶる。

「ここから、頑張らないと!」

そうして始まった。

誰もが想像などしていないだろう。

彼女が、様々な事に巻き込まれる生徒を命を掛けて守る姿を。

そう、「彼」のように

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先生は私にこう言った。 MasterMM @Mastermm

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