余談(気になったこと)
いくつかの歌で共通して気になったことがあったため、一応文字に起こしておく。まずは気になった歌を引く。
わたしたち定員二名の箱舟に猫も抱き寄す 沈みゆかなむ
/Swan boat(P.27)
やはらかな鱗の覆うまなぶたが音なく落ちぬ、鳥の眠りに
/砂糖の森(P.98)
きやべつとふ小国ひとつ剥きゐつつ人の暮らしのこんな儚さ
/家を売る(P.103)
これらの歌をそれぞれ読んだとき、共通するノレなさをわたしは感じた。旧Twitter(X)において、たびたびいい歌として引用されているのも見かける歌も含まれているため、この感覚は一般的なものではないのかもしれないと思ったが、わたし一人が感じているなら他にも感じている人がいるだろうと根拠もなく思うので指摘しておこうと思う。
勿体ぶっても仕方ないのでさっさと指摘してしまうと、これらの歌に共通するノレなさは「下句や結句での答え合わせ感」である。「沈みゆかなむ」とまで言わなくても想像できるだろうし、「音なく落ちぬ」で眠りまでは想像がつく上に、鳥であることは連作中の文脈を考えれば明らかである。三首目に至っては、「きやべつてふ小国ひとつ剥きをへぬ」としておけば俳句(しかもかなり名句!)としてでも成立しそうなのにも関わらず、下の句で「人の暮らしのこんな儚さ」とまで抽象化して答え合わせをしてしまう感覚がある。ノレなさを感じた歌はすべて上の句がとてもいいと思ったため、一首の途中に改行されることと合わせて、第二歌集では修正されていてほしいポイントである。
擬人化と異化/睦月都『Dance with the invisibles』評 早瀬はづき @haduki_tanka
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