僕がいる世界、僕が見ている世界

たれねこ

僕がいる世界、僕が見ている世界

 白い雪が静かにゆっくりと僕の世界を白く染めていく。

 雪の勢いが強い時は、ホワイトアウトと見間違うほどに世界の全てが白一色になる。

 雪は建物にも僕自身にも降り積もり、世界が反転すると舞い上がった雪はまた降り始める。

 僕はこの世界の唯一の住人だ。この世界は雪以外の全ては動きを止め、新しく建物も人も増えることはない閉じられた世界。

 しかし、僕の目に映る世界はいつもきらきらと揺らめいている。

 その美しさは僕だけのモノのようで、実際は誰に対しても平等で、雪が降らない場所にも雪が降ることがある僕たちの世界は、雪に彩られた美しさと幸せを共有できるという意味ではある種のユートピアなのかもしれない。


 そして、また誰かが僕の世界に手を伸ばす。

 僕の世界を雪に染め、その誰かはその美しさに目を輝かせた。


「ママー、わたし、これが欲しい!」

「スノードームね。誕生日プレゼント、本当にこれでいいの?」

「これがいいのっ!」

「分かったわ」

「ありがとう、ママ」


 その誰かの幸せそうな笑顔を雪が降る世界越しに見つめていた。

 そして、僕の世界は大事な誰かのためにラッピングされる。

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僕がいる世界、僕が見ている世界 たれねこ @tareneko

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