謎の家から脱出?初めての怪物?

意識が戻った俺は先ほどいた公園とは全く違う場所にいた、ここはどこかの家なのだろうか?しかし家にしては家具などの物がない。

「たしか謎の柱に囲まれえてから気を失ったんだよな、てかここはいったいどこなんだ」

 俺は屋内をかってに漁ることにした、あわよくば金目のものや役立ちそうな道具があることに期待したが、あったのはボロボロの箒だけだった。

 そもそも人が住んでいた気配がしない、家中は埃まみれで長年掃除がされていないだろう。

「異世界ファンタジーものかと思いきや、なんか怖いしホラゲーの世界に召喚された感じなのか?」

 俺は少し冷静に事を考えることにした、勝手に召喚されたと思っているだけで、実際は現実世界の可能性もないか、異世界に行ってみたいという気持ちがここは異世界だ!と思っている可能性があるだろう。

 「たしか鞄の中にスマホ突っ込んでたよな、鞄はどこにあるんだ?」

 俺は携帯していたはずの鞄を探すことにした、しかし辺りには箒以外の物は何もないことを思い出す、俺の記憶が正しければ鞄は公園のベンチに置いたはずだ、俺の周りに鞄がないということは鞄はここに来れなかったか、もしくは盗まれたということになる、盗まれたという線は消してもいいだろう、安物のスマホと金も入ってない財布なんて盗む人はいないだろう。

 召喚する対象が俺だけだったという可能性もある、ならば俺がポケットに入れているハンカチとティッシュはあることになるはずだ。

 「おいマジかよ、ハンカチとティッシュはあるのかよ、現状で全く役に立ちそうなものはないって運悪すぎだろ」

 これは仮に召喚されたということが前提の話だ、まだ外は見に行っていない、召喚されたと決めつけるのは早計か、外に出て確認するしかない、しかしこの家から普通に出る手段がないのだ、家のはずなのに出入りするはず玄関にドアがないのだ。

 「外に出るには2階の窓から飛び降りるしかないし、俺詰んだのか?こんなところで」

 ガキのころ、友達はよく高いところからを飛び降りて着地をする遊びをしていたが、ビビりな俺はそんな遊びは絶対してこなかった、よく皆できるな~と傍観していた側の人間なのだ、そんな俺に2階から飛び降りて上手いこと着地しろは無理ゲーでしょ。

 あれから体感30分くらい経っただろうか、俺の中ではもう2択だった、この家に留まっていつ来るかわからない助けを待つことにするか、もしくは2階から飛び降りて外に出るかで迷っていた。

 これが夢なら100%後者を選んでいただろう、何故なら夢ならノーダメで済むからだ、残念ながらこれは夢ではない。

 助けが来るのを待つという希望に縋るのもいいが、こんな廃家に助けは来るのか、普通に考えて、ここが現実世界でも助けは来ないだろう、なら腹を括って2階から飛び降りて外に出るしかないだろう。

 そうと決まればどこに着地するか考える、2階には3つの部屋があり、窓があるのは2部屋だけだ片方の窓は人が出れそうな幅はない、反対の窓は人が出ることが可能な幅の窓だ。

 これならいけると思った俺だが、窓から下を見るとぞっとした、下はコンクリートだった。

「前言撤回、これはいけねえよ…初めての飛び降りがコンクリは恐怖でしかねえよ…」

 しかし迷っている暇はない食料も水もないのだ、この場所に籠っていても助けが来る前に死ぬ可能性が高い、ならコンクリでも飛び降りて外に出るのが正解だろう。

 カッコつけて飛び降りてもいいのだが、怖いので窓にぶら下がって、そのまま落下することにしよう、それならよほど打ち所が悪くなければ死ぬことはない、骨折くらいで済むだろう。

 「お願いします神様助けてください!これからは真っ当に生きますので!」

 神頼りして効果があったことはないが、何もしないよりはマシだろう、実際は神なんていないと思っているが、いてほしいという気持ちもある、そんな曖昧な気持ちが俺にはある。

 覚悟を決め降りる、ドサッと言う音はしたが、何の痛みもない、痛覚が痛みのせいで麻痺しているのかを疑ったがどこも痛くない。

「異世界はもしかして落下による痛みがないとかあるのか?ゲーム感覚で飛び降りてよかったのかよ」

 しかしこれからどうすればいいのか、外には出れたが、見渡しても辺りは緑一色、木しかない、ここから先は完全に運次第ということだ、迷って死ぬか、うまく街まで辿り着くかだ。

 俺は冷静に外から廃家がどう見えているのかを確認することにした。

「いたって普通の家だな、廃家と決めつけていたが外見は割と綺麗だ、でも何でドアがないんだ?この世界ではドアがないのが一般的なのか?」

 割と綺麗で目立っている、ここを目印にすれば迷うことはなさそうか?しかし俺は方向音痴だ、目印があったとしても戻ってくることは困難、なら戻ることを考えずに突き進むしかないのか?と考え事をしながら木々をみていたのだが、急に後ろの廃家からどでかい音がした、後ろを見ると廃家が消えていた。

「さっきまで考えてたこと全部パーかよ、廃家は俺が生み出した幻覚だったのか?でも幻覚にしては色々おかしい気がするが」

 目印作戦は廃家が消えたことによって不可能になった、なら突き進むしかなさそうだ、幸いここは標高が高い気がするので、多分山だろう、なら下山すれば町にたどり着けるんじゃねという至極単純で浅はかな作戦で行くことにした。

 廃家があのような消え方をしたから、ここは異世界で間違いないだろう、アニメの異世界といえばモンスター、ならば、この世界にも怪物がいる可能性が大いにあると予想できる、それを避けながら俺は下山しないといけないと考えると頭が痛い、俺は運動神経が終わっているのだ、怪物に接敵したら逃げ遅れて確実に殺されてしまうだろう、ならばどうするべきか?怪物が夜行性に賭けるしかない、俺にしては完ぺきな作戦だと思う、動物のことは全く知らないが、何かの記事で夜行性の動物が多いって見たことがある、それに賭けるのが今の俺にできる最善の選択だ。

 ちょうど今は真っ昼間だ、この世界が元居た世界と違って夜でも昼みたいに明るいということを線除けば下山するのは今が最適だと考える。

 「山なんて中学生のころに氷ノ山登った以来だな、あのとき班行動してたのにいつの間にか俺一人になったんだよな、下山するときも足滑らして危なかった苦い記憶を思い出すな…」

 そんなことより今はこの山から下りる方法を考えるのが先決だ、普通に下っていくのが一番楽なはずだ、安全かどうかチマチマ確認しながら下りるとするなら日が暮れるだろう。

 「ここは楽なほうにするか」

  嫌なことから逃げて好きなことしかしてきていない人生なのだ、異世界に来たからと言って性格がまともになるわけではない。

 よくアニメとかにいるだろ、異世界に来たら急に性格変わってまともになるキャラ、異世界に来たからとカスが有能になるなんてありえない。

 くだらない考えをやめ、取り敢えず下ることにする、嫌なことは行動することに限る、いつもの俺なら嫌なことは後回しだが、生死が係っているのを後回しにできるほどの肝っ玉はない。

 少し下ったが、今のところはただの山だ、少し怖い点を挙げるなら、木がとても雑に切られている点だろう、伐採にしては切った木がそのまま残っている。

「山なのに、道がはっきりしてる、これなら少し早歩きしても大丈夫そうだな」

 俺はあの木を見てから全く落ち着けない、さっきは強がって伐採かなと言っていたが、あんな雑にはしないだろう、十中八九怪物がやったと思っている。

 体感40分くらい歩いただろうか、疲れたので日陰で休憩することにしたが、少し周囲がどうなっているのかが気になってみてみると、少し遠いところの木に緑色の液体みたいなのが見えた。

 「異世界ファンタジーお馴染みのスライムか?でも俺に倒せると思わないし、ここから逃げるべきか、でもスライム=弱いってのが異世界の定番だし記念に見に行くか」

 俺は初めての怪物で浮かれてたのかもしれない、緑色の液体に近づいた瞬間俺は意識を失った。

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