第5話 城内探索!

 「それで、まず最初はどこに行ってるの?」


 ホールを出た後は、先程通った廊下を折り返し、転生されてきた部屋を通り過ぎたところで尋ねた。


 「ん~、最初はこの建物内のつくりを紹介してあげる。今向かっているところは、食堂で、基本的には24時間営業をしてるの。中は結構広くて色々なものが売っているから、朝から夕方までは常にごった返しているわ。それでも席は多いから座れないなんてことはめったにないんだけどね。で、二階から五階までは一体一体の魔物に個室が与えられているわ。まあ、一室4畳くらいの広さだけどね。そして、六階から八階は、魔物たちの教育の場になっているわ」


 「魔物たちって何を学ぶの?」


 「ん~、簡単に言うと、戦闘技術や芸術とかを学ぶかな。あと、農業のイロハとか。いつか必ずここの個室から退去して、自立しないといけない時が来るからね。その時に自分の力で稼いでいかないといけなくなるからね」


 「退去したら、その後はどこに暮らすの?」


 「あ~、言ってなかったか~。この城の裏には大規模な村があって、魔物たちが自分たちの家で家族と一緒に暮らしているんだよね。その村では、農業や手工業で市場を開いてみんなで助け合って暮らしているって感じよ」


 まさか、この城の裏に村があったとは。


 でも魔物も親がいなければ生まれない。


 こんなにこの城に子どもたちが通っているんだ、その親もどこかに暮らしているのだろう。


 その後、二人は食堂を覗いた。


 食堂はホールの対極の位置にあり、既に中は魔物で溢れていた。


 「この状態じゃ、並ばなきゃ買えないかな。先に六階の教室に行こっか。そこからだったら、窓から外の景色を一望することができるし、ちょっと空くまで待とっか」


 こうして、二人は食堂横の階段から六階に上がった。

 

 六階につくと、教室のような広さの部屋がずらりと並んでいた。


 そして、階段の前からから三番目の教室に入り、窓の前まで行った。


 「ここが、一番見えるかなあーっと。ほら、ここから見える景色が城の裏なんだけど、ここから見える辺り一帯は全部さっき話した村なの」


 窓の先には、緑で溢れた民家の様な家と、奥には、大規模な畑や、田んぼがあった。


 いかにも「」という言葉が似あう穏やかな村だった。


 ここで、春乃はこの景色を眺めながら、先程からあった疑問を聞いた。


 「ねえ、この城での授業が無いときとかはローニャは家に戻ったりするの?」


 春乃は興味本位で尋ねた。


 そして、その問いを聞くとローニャは直ぐに体を固めて立ち尽くした。


 さらに、目に涙が溜め、「グスッ、グスッ」と泣きながら膝をついて泣き出してしまった。


 「私の両親はもういないの、、、。私が10歳になる前、なる前に、森に行って、そのまま帰ってくることはなかったの。勇者に殺された、、、勇者に殺されたの!!!私のママとパパは人に攻撃をしたことは無かったのに。それなのに、、、それなのに偽善の心を持った勇者パーティーに殺されてしまったの。うわぁぁぁん」


 なんという真実だろうか。


 ローニャは、勇者に親を殺されて、一人取り残された悲しき少女だったなんて。


 この魔王城が、学校ではなく孤児院だったなんて。


 それなのにも関わらず、人間の姿の私にこんなに優しくしてくれていたなんて。


 「ご、ごめん、私、何も知らなくて、なんと失礼なことを言ってしまったの。本当にごめんなさい。悲しかったのに、思い出させちゃって、、、本当にごめん...」


 「いや、お姉さんは悪くないよ。悪いのは勇者一行に違いないから。お姉さんが謝らないで。それに私、絶対に仇を討つから。両親を殺された恨みを絶対に晴らすから。魔王城に勇者一行が到着したと知ったら私、一番に突撃しに行くから。その時はお姉さん、絶対に殺さないでね」


 「あなた、本当にいいやつなんだね。人間の姿の私にこんなに構うなんて。そんな過去を持ってるのに、こんなに優しくされたら私も涙が、、、出てきちゃうよ。。。」


 涙が地面に落ちた音が聞こえた。


 春乃の目から垂れていた。



 その後、二人は泣き止んだ後、一旦心を落ち着かせるために自室に戻ることにした。


 と言っても、春乃は個室を持っていなかったのであの薄暗い部屋に戻ることにした。


 「いつか個室を借りなきゃ」と思いながら廊下を歩き、転生された部屋の前に来た。


 そして、ドアノブを押して中に入ると中にがいた。


 その人は、ホールで見た本を持っていた女の子で、なにやら起こった様子で春乃に言ってきた。


 「あなた、この部屋に何の用ですか!ここは立ち入り禁止なんですよ。というか、人間、、、ということは外部の者か。侵入者には容赦はしない」


 「いえ、勘違いです。私は決して怪しい者なんかではありません。飛ばされただけなんです。許してください」


 「話は魔王様の下で聞こう。とりあえずついてきなさい」


 こうして連れていかれる羽目になった。

 

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異世界魔王の右腕小説家 ~ペンとネコミミで世界征服のお手伝いをするのですっ♪~ @oonukimememe

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