003 「三日目」 「僕」の現在の日常の人物相関図


  一般の人々の日常の主たる関心事のレベルの出来事を、その最大公約数と、できるだけ共感しうる形式と内容を中心にして、もって興味を持ちうる、面白いストーリーにする…


 小説への理解、定義は、(陳腐だが?)僕の場合はその程度で、だからできるだけ平凡な人物の書いた小説の方が、読まれやすいともいえる。


 平凡な発想、常識、のほうに違和感を持ってしまうという偏奇な個性の人でも、常識のレベルを認識できて、そこの区別を理解ができていれば正常人で、逸脱せず、普通は排除もされない。


 主人公の僕は、駆け出しの小説家で、アマチュアだが知名度もないこともなく、希望のようなものも抱いては「いた」。


 自分という人物と向き合う、言語的に定義するという作業も日常的にしたりはする。

 いろいろな作家を読んで、「いろんな人がいるなあ」とはやはり感心するのはいつものことで、作家の場合はその人の思考のパターンとか語彙、読書の傾向なども作品を通じてわかるから、より深く内面生活まで理解できることになる。


 普段に交流していても、ある人物について窺い知れることは限定的で、人物理解においては、世間的なそれも含めて、印象やイメージの要因が大きい。


 人間や人生について知るための「闇で恃んだただ一灯」だったのが、僕にとっては「活字」の世界だった。で、そのことにも「縄のような糾える禍福」があったが、とにかくそうしてどうにか「降りかかる火の粉」を払っていなければ、不条理の歯車に圧殺されて無意味に斃死するだけだった。


 幾星霜の、長い試練との葛藤があって、…どうにか小説家、という仕事についての適性、才能を見出して、自信を持ち始めて、自分のあらゆることが違った様相を呈し始めて、それはもちろん、周囲との関係についても同様で、また新しい人生…ニューディール、新規蒔き直し、を始めかけた…

 

 その矢先に、飛び込んできたのが、「100日後の世界滅亡」のニュースだった。


   「『深い河』に魅せられて         遠藤夏樹」


 「「深い河ほど静かに流れる」と、いう諺があるが、スキゾフレニア気質、テンパー?の人の内面は豊かとも普通はいわれる。芥川某、太宰某、の外貌や作風はスキゾ気質を思わす。で、ヴォネガットという米作家は「坑内カナリア」と、作家の社会的な役割を形容した。沈没しそうな船からはネズミが逃げ出す…?直観力は…」


そこまで、いつものかなり、晦渋で哲学的な?、古典的な形式で、4日前にちょっぴりだけ書き出しを書いた新連載の小説にもしかし、この事態の変化を取り入れる必要が生じてきた。と、思うが?


 どういう風に路線変更すべきだろう?中断してしまえと言われれば従うほかないが、雑誌やそのほかの社会のあれこれシステムは当面は続行していくという可能性が高いし、 


 だから、



… …


 沈思黙考を小一時間続けた後に、自分としては、自伝というか、なるべくありのままに、日常や状況や、日々の出来事を素直に、淡々と、描出するという、これまでの自分の作風と100%正反対の、だから私小説的な風俗小説?…一番小説を書き始めたばかりの人が取りがちなスタイルで書いてみようとかと思い立った。


 かのサルトルの代表作の「嘔吐」、これは原題の意味は「吐き気」で、「他人」という意味のタイトルを「異邦人」と訳したのと同様な実存主義への違和感故なのかと思ったりもするが、その冒頭には、「日記は思ったことより行動の記録にした方がよい」と、書いていた。

 だから、理屈っぽさを、極力排して、人間の本質を、根源的な真実を、そこにあぶり出そうという、創作動機の宣言なのだろう。


 モーム氏は「世界十大小説中の白眉」と、この小説を評した。


 だから、僕も最後の小説は、写実的に淡々としたスタイルで、ぎりぎりの状況に置かれた人間を、「嘔吐」的、サルトル的に描いてみようか?そう思ったのです。…


で、パロディ?というかそうしたユーモアを好む傾向があるので、「嘔吐」のシリアスさや絶望的な発想を、なんとなく諷刺的に書いてみても面白いかもしれない。


 もう世界は滅ぶのであるが、そこに、それゆえの?希望を見つけていくというのか?

 滅ぶが故の救済、「嘔吐を催す」ものではなく、存在というものは一種の輝かしい奇跡で、唯一無二の、一期一会の無限、夢幻…オカルティックな聖化された精華…


 そういう風にすればポエムになるかもしれない…


<続く>



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新連載小説・『百日後に終わる世界』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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