002 「二日目」 個人的な体験
僕がそのニュースを聞いたときに、もちろんいろんな思いが交錯したが、まず意識に上ったのは、「すべてもう終わるんだ。もう思い煩ってもどうしようもない。全部整理してしまえる。」という安堵感だった。
僕にとって、「生活」とは厄介な責め苦に耐えることで、「シジフォスの神話」そのものだった。
清算してしまえる。他人や世間という桎梏、全ての「人間の絆」から解放される。
自分についての葛藤から解放される。
滞りなく、恙なく行間を埋めていくだけという、むなしい作業からも解放される。
残り時間は100日。
泣いても笑っても変わらない。
日常は、不断に継続している普段の意識は、それだけがすべてのはずだが、そこへのアンガジュマンを常に否定してくる超自我的な何者かとのアンビバレンツな構造をなしている。終わりのないむなしいいたちごっこ。答えのない時間の外延。
そんな地獄ももう終わるのだ。
inferiority complex ,
priority complex
少なくとも問題の解決における、「時間」的な要素は限定的になった。
飛躍的に考慮に入れるべきパラメターは減った。
これはつまりシジフォスの独白…、誰にも感情移入できない世界を背負う巨人の、苦悩への、それは「救済」なのだった。
死ねない抜け殻のあがきへの天国的な挽歌なのだった。
<続く>
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