新連載小説・『百日後に終わる世界』

夢美瑠瑠

001 「一日目」 世界の終わり



 青天の霹靂だった。


 NASAからの報告が、全世界に、臨時ニュースを伝えた。


 「…みなさん、臨時のニュースです。非常に残念なニュースです。結論を先に言うと、この地球は100日後に滅亡します。超巨大な赤色巨星が突然にレーダーに出演して、まっすぐに地球に向かっていることが観測されたのです。


 100日後には地球はその赤いバケモノに飲み込まれてしまうことが明らかになりました。われわれNASAのチームが…」


放送はそこで途切れた。


 デマかなんだかわからないが、しゃべっている人物も、口調も、まったく異常な印象はなく、かつてオーソンウェルズとHGウェルズが巻き起こしたような、パニックの、それが狼煙となった!


 NASAへの電話やらの問い合わせが殺到して、たちまち回線はパンクした。ほどなくして、アメリカ政府からの正式な発表があり、放送は「まったくの真実」で、「100日後に地球が滅亡することは疑いの余地がない現実」であることが、大統領の口から言明された。


 「赤色巨星」…”レッド・ゼウス”という渾名がついたその怪物は、まったくの謎に包まれていて、突然に出現した理由も、背景も、すべて不明で、天文学者や物理学者も解析不能、対策も立てようがなく、お手上げ状態だった。


 人工衛星や天文台が観測して、”レッド・ゼウス”の写真が、まもなく全世界に流布されたが、想像を超える莫大なスケールであり、「血の色をしたバケモノ」というしかない、不気味なほどの迫力だった。


 「滅亡を待つしかないのか!」

 「ほかの星への脱出は?」

 「ほかの文明の発達した惑星とかとコンタクトを取って救済の手立てを探れないものか?」

 etc etc…

 甲論乙駁状態を呈して、しかし、どこにも逃げる場所はないという状態なので、表面的にはむしろ普段以上に平穏で静かだった。


 「静かなる大恐慌…」

 翌日の新聞にはこんな見出しが躍っているくらいだった。


… …


<続く>

 

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