5. 蛇足ですが
これは蛇足なので読まなくてもいいですが。
ここ「カクヨム」でも他の小説投稿サイトでも主流を占めている、いわゆる「なろう系」ですが、最近は「おっさんが何か飛びぬけて強力なスキルを手に入れて無双する」というパターンの作品を見かけます。「死んで異世界に転生してスキルを手に入れた」か「もともと強くて有能なのになぜか世間から顧みられることがなかった」のかは作品によりますが、まあその「スキル」さえあれば、そこから努力しなくても、若者から驚かれ尊敬してもらえる、といった感じのようです。
ですが、我々の今生きているこの現実世界では、おじさんやおばさんは無双するどころか、常に更新されていく情報技術に翻弄され、若者についていくために、必死に新しいソフトやハードの使い方を覚えなければなりません。今までの人生で蓄積した経験を語っても、すぐに「老害」扱いされる有り様です。
いや、おじさんに限らず、若者でさえも、常に更新されていく情報を追いかけるだけで大変なのかもしれません。さらに最近などは、AI技術がまさに日進月歩で、人間の脳がついていけるのか? と危機感を覚えるほどの高速で進化しています(AIによる画像生成やフェイク動画の作成が話題になり始めたのが何年前か、あなたは覚えていらっしゃるでしょうか?)。
そんな「イノベーションが支配する現代社会」のスピードに疲れ果てた人たちが、「なろう系」のようなファンタジー世界に癒しを求めているのだろうか? などと、カクヨムのトップページの見出しを眺めながら、ふと思ったりします。ファンタジー世界には、イノベーションはありません。一度、他者を圧倒できる「スキル」を手に入れさえすれば、もうそれからは、若者に追いつかれないようにスキルを必死で磨いたり、進歩する魔法の知識を更新し続けたりする必要はないのです。
また、ピーターの法則にあるように「どんな人でも無能レベルまで昇進する」こともありません。ファンタジー世界は、それがモデルとなった中世と同じく、カースト制、階級制なのですから。
でも、残念ながら、それは夢想の世界だけのことです。我々は、おそらく死ぬまで、この更新され続けるイノベーションにお尻をつつかれ、追い立てられ続けて人生を終わるのでしょう。追い立てられて走り続けられるだけでも優秀な人間で、そこから落ちこぼれる人も珍しくはないのかもしれません。
あなたは、後ろから電子の高速で迫るイノベーションに追いつかれないように、どこまで走り続ける自信がありますか?
ちなみに、私はもうあきらめてます。
ではまたどこかで。
評論:「葬送のフリーレン」の魔法使いたちはイノベーションの夢を見るか? 絵茄 敬造 @Ena_Kzou01
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