ハコのコ

学生作家志望

ハコのコ

「これにします」


俺はそう言い、今日のハコのコを選んだ


他の人たちはもうどこかに飛んだようだ


今日のテーマは野原にある家のようだ


他の人たちのテーマはあとで聞くことにして、今日も早速...


「それじゃあさ、君は何ができるの?」


「お酒がいっぱい。飲めます!」


「そうか、じゃあ部屋に入ってたくさん飲みなさい。」


部屋にはいつもたくさんのお酒が用意されている


一足先に入っていたそのコはグビグビとテーブルにあった酒を飲んでいた


「はっはっw君はすごいなー。俺の分も残しておくんだぞ?」


「わかっております!」


「ほら、ついでくれ!」


俺がそう言うとコクコクゆっくりと俺の猪口に入れてくれた


「なあ、少し話したいことがあるのだが」

「なんです?」


「俺な、ハコに選ばれたんだよ。1年後に入るんだ、ハコに」


「え」


空気は見えないけど、固まってるのはわかる


「なんで...」


「たまたまだよ。抽選で選ばれちまった」


「だからこの際、言いたいんだよ!お前に、全部。」


この部屋は確かに野原の上にあるが、結局は全部嘘。演出の上にある。監視カメラもきっとどこかに身を潜めていることだろう


俺はあの日、選ばれた。ハコを選ぶ立場に


ハコのコを毎日1人決めては、決められたランダムのテーマの中で恋愛をする


狂った世界。恋愛といってもハコの中のコは見えないから、男の子か女の子かは入ってから明かされる。


ハコを選んだ人はその後にそのコができることを聞いてそのコの事についてゆっくり知っていくことになる。


ハコのコはハコの位置が変わるから同じになる事はほとんどない。いや、そもそも同じになろうとなんてする人はいない。


ハコのコは毎日のように増えていく、だが、同じように毎日のように減っていく。


「あの、僕を殺さないでくださいね。」


「何言ってるんだ、俺はハコのコを殺した事はない。」


乱暴な選び人がいる。そもそも、このハコの遊びは拷問好きな大人によって作られたゲームだ。それに従ってハコのコを殺す人もいる


だが、選び人も抽選で選ばれ呼ばれたから、殺すのなんて俺にはとってもできたもんじゃない。


「なあ、聞いてくれ。」


「はい。」


「運営は誰だかわかるか?わかるわけねえよな。」


このゲームの運営はネットにアカウントだけを作って個人情報は一切載せないから、何も情報はない。見知らぬ関わりのないアカウントから連絡が来た時はブロックをしようとする人がほとんどだが、このアカウントから来るときだけはみな必ず同じ返信をする。


「はい!お願いします!」


その日からはハコの選び人になる。だがもう一つの形のメッセージも時にある。抽選でハコのコに選ばれた時だ。その時も、人は


「はい!お願いします!」


と、やはり返信する。


「仕方ないんだ。やらなきゃ殺される。それは君もわかってるだろ?本当に狂ったゲームだよ。」


「そうですね。」


国はこの正体不明のゲームを止めようとは何故かしなかった。出来ないのかもしれない。もしかしたら、これは国も絡んでるのかもしれない。そこまで想像ができてしまう。そんな恐ろしい状況の中で、俺たちは恋愛シュミレーションゲームをやらされるということだ


「はあ...とにかく、もう疲れたよ。選び人の仕事は」


「僕は、ハコのコになって1ヶ月なんです。まだなんとか、生きれています。」


「君は評判がいいよ。当たりのコだって。だからもう大丈夫さ。」


「そうなんですか?よかったです。」


「さあ、もうそろそろ仕事も終わりの時間だ。」


仕事の時間は短い。終わりに近づくと必ずこの言葉を言わなければならない。


「好きです」


「はい!僕も好きです!」


好き。これは何回も言ってきた。これを言ったのにも関わらずハコのコを無惨に殺す人もいるが、それはもう考えない


「それじゃあ、頑張ってくださいね。ハコのコ」


「ああ、そっちも生きるんだよ。」


「はい。」





─ハコ─

「No.3335865。」


「はい。」


あの日から1年。ハコの中にいると他のハコの様子はわからない。選ばれて、その仕事が終わっても、またハコの中に戻るだけ。結局それだけなんだから。とうとう2週間も監禁されてしまった。もう、誰にも会えないのだろうか


「時間です。早くいきましょう」


ハコを出ると、謎の部屋に連れて行かれて、そこで謎の機械をつけられる。そこからはテーマ通りの場所に連れてかれる。


今日も...


「あ。あの、彼は」


その機械をつける部屋のみ、他の機械をつけてるハコのコの様子を見れる。


そこには大量に眠ったままのハコのコがいる。


「ああ、もしかしてNo.66557、ですか?」


「そうですよ!」


好きと言った彼の顔を久しぶりに俺は見ることができた。偶然だ


「あの機械に入ったのは1週間前ですよ。それ以来、動いてません。」


仕組みがどうなってるのかはわからないが、選び人に殺されたのはわかる。血は出てないが。


「ほら、ハコのコ。行きなさい。」


俺は頭に機械をつけて、その世界に飛んだ


今日のテーマは、山の中の家らしい。


俺はハコのコ。今日も新しい恋愛をする




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ハコのコ 学生作家志望 @kokoa555

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