地獄

ゆきのともしび

地獄



いいかい


堕ちてはならないよ


あの残酷な


赤 茶 黒 紫を どろどろに溶かしたような


生臭い沼の中に




この世界の大半のひとびとは


残念ながらその沼に堕ちてしまった


それはとても


嘆かわしいことだ




彼らは大抵 ひとりぼっちで


身近なものへの


執着や憎しみと



ほんとうの


己の魂の声を


聴けずに終わってしまったひとびとだ



耳をすまそうとせず


仮面を被り


泥の投げ合いを


止めることができなかったのだ




さあ おまえはどうだ?



いまその右足を


その沼に浸そうとしてはいないか?



地獄に脚を踏み入れるのは


或いは楽なことかもしれない



他のものと同じことをすればいいのだから



刺激のある事柄を


刹那的に愉しめるのだから





いいかい


魂の声を聴くんだ



わたしには


おまえがそこに相応しいとは


とてもおもえないのだよ




もっと 高尚な


豊かな


透明な


光を見出せると


わたしは信じている




さあ どうする?




わたしの声が


聴こえるうちに





生命の感覚を


忘れないうちに





耳を澄ませてごらん



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地獄 ゆきのともしび @yukinokodayo

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