幽鬼 3人台本 (男1、女1、不問1)
サイ
第1話
僕:いいか、今からお兄ちゃん以外のやつはみんな「鬼」だ。鬼が来たらこれを使って、鬼を追い払うんだ。
妹:知ってる!「おにはそとー!」ってするんでしょ!
僕:ああ、大きな声で言うんだぞ。
妹:大丈夫!私、おっきな声は得意だよ!
僕:よし…じゃあ僕、ちょっと見てくるから。
妹:いってらっしゃい、おにいちゃん!
僕(m):階下から、ごそごそと物音が聞こえる。階段の柵に頬をあてて、耳をすませる。
侵入者:なんだ、これだけか…立派な佇まいだったから、もっといいものあると思ってたのに。
侵入者:他の部屋も見てみるかぁ。さすがにこれだけで帰るのはなぁ。
僕(m):…間違いない、最近この辺でよく出没している空き巣だ。
僕(m):最悪だ…よりによってお父さんもお母さんもいないときに。
僕(m):僕がしっかりしなきゃ…あいつを追い払わなきゃ…
侵入者:外から見た感じ、2階建てっぽかったし、どっかに階段があるはずなんだよなぁ、どこだろ。
僕:っ?!
僕(m):それはまずい…2階にくるまでに追い払わないと。…でもどうやって。
侵入者:とりあえず、くまなく見てみるかぁ。こっちの部屋はどうだ?
僕(m):…よし、階段からは離れた。なんとか1階で追い払わなきゃ。
妹:おにはそとー、ふくはうちー♪
妹:ぱらっ ぱらっ ぱらっ ぱらっ まめのおとー♪
妹:おにはこっそり にげていくー♪
侵入者:お、広めの部屋はっけーん。ここならいいものありそうだ。
僕(m):間を開けてこっそり後をつけているけど…怖くて仕方ない。
僕(m):なんの前触れもなく振り返られて、いきなり襲われでもしたら。
僕(m):すると、どこかで乾いた音が聞こえた。
侵入者:な?!…いや、ただのラップ音か。昼間の下見では誰もいない感じだったし…ありえないって…。
僕(m):何かぶつぶつ言ってるけど…うまく聞き取れない。
侵入者:…お、これなんていいんじゃないか?アンティークな感じがして、いい雰囲気だ。
僕(m):最悪、物は取られても構わない。妹が一番大事なのだから。
侵入者:やば…いいな、これも、これも!
僕(m):喜んでいられるのも今のうちだ…。
妹:おにはそとー、ふくはうちー♪
妹:ぱらっ ぱらっ ぱらっ ぱらっ まめのおとー♪
妹:はやくおはいり ふくのかみー♪
侵入者:こんなにいいものがあるなんて…!これは2階も期待できそうだな。
侵入者:お、こっちに階段発見!さぁ、2階にはどんなものがあるかな…!
僕:…行かせない。
侵入者:…え?うわっ?!誰だお前!!
僕:2階には、行かせないから。
侵入者:こっ、子どもがなんでこんなところに!お前いま何時だと思ってるんだ?!
僕:帰って。
侵入者:もうほら…深夜2時半だぞ!家出中なのか?
僕:帰って。
侵入者:こんなお化け屋敷みたいな館(やかた)に子ども一人で来るなんて危ないだろ…!
僕:帰れ!!!!
侵入者:な…!
僕:ここは僕と妹の大事な家だ!帰れ!!今すぐ帰れ!!
侵入者:いやそんな…まるでここに住んでるみたいな言い方…。
僕:ここは僕と妹の、大事な家だ。
侵入者:ここはもう、何十年と空き家なんだぞ?!地元じゃお化けが出るだの心中があっただの、いろいろ噂が経ってるし…。
僕:僕と妹は、ずっとここにいる。
僕:邪魔したら許さない。
侵入者:邪魔って…俺はただここの写真を撮りたかっただけだよ!寂れた洋館が好きで、いろんな廃墟に撮影に行ってるだけで…。
僕:うるさい!出ていけ!!
侵入者:うわっ?!
僕(m):僕がそばにあったおおきな壺を振りかぶると、侵入者が懐中電灯で目眩しをしてきた。僕は誤って壺を自分の頭の上に落としてしまった。
僕:出ていけ!!
僕:出ていけ!!!!
侵入者:で、出ていく!出て行きたいけどお前が出口のある方向に立ってるせいで行けないんだよ…!
侵入者:仕方ない、2階に逃げるしかない…!!
侵入者:はぁ、はぁ…。ま、まいたか…?
侵入者:ひどい目にあった…早くここから出ないと…。
妹:んー?
侵入者:うわ?!ここにも?!
妹:あなた、誰?
侵入者:ち、違う!俺は別に荒らしでもなければ物盗りでもない!ただ写真を撮りに来ただけなんだ!
妹:ふうん?
妹:じゃあ、私を写真に撮ってよ。綺麗に撮ってくれたら、おにいちゃんには内緒にしておいてあげる。
侵入者:写真…?そんなことでいいなら何枚でも…。
カシャ
侵入者:…あれ。
カシャ
侵入者:ど、どうして。
カシャ
侵入者:う、うつらない。
妹:まだー?
侵入者:ま、待ってくれ、なんでだ、なんでなんだ、どうしたら。
妹:(息を吸う)
妹:おにはーそとー!!
侵入者(m):少女の手から投げられたのは豆、じゃない。
侵入者(m):飴玉くらいの、鈴。
侵入者:や、やめろ!大きな音を出したら…!!
侵入者:あ…あ…!!
僕:「おにごっこ」はおしまいだよ。
僕:さようなら。
幽鬼 3人台本 (男1、女1、不問1) サイ @tailed-tit
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます