冬の日

千恵花

冬の日


冬の日

冬の声を聞いて


風の音

雪を踏む音

氷の割れる音

氷柱から落ちる水滴

手を温めるために吐く息

足下の

冷たい土の中で

深く眠る生き物たちの寝息

見上げれば

硬く閉じた蕾

華やかに開く時を待つ桜の囁き


春の日に

華やかに咲く花の言葉が飛び交うような

賑やかな景色はどこにもないけど

目立たぬように

静かに

冬には冬の囁きが聞こえてくる


わたしは

透き通る夜空の

星の声を聞くのが好きだ

きーんと冷たい空気

遮るもののない広場で

見上げられる限り首を傾けて

一つ一つ星の輝きを見る

ひときわ大きな金星の煌めきは

いつも

ここにいるよ

どこにもいかないよ

あなたが言うような言葉を

わたしに語りかけてくる

そしてそれが

わたしの隣で

冷たくなった両手を

温めてくれるあなただったらいいのに


冬の日

春を待つ全ての言葉を聞きながら

冬の日

春になればきっと

あなたの声を聞ける日がくる

それまで

待っていよう

聞いていよう

冷たい土の中から

ああ、良く寝たと

目覚めて背伸びする生き物たちのあくびを

聞き逃さないように





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

冬の日 千恵花 @caorinhana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ