第7話
アルと名付けた妖精さんと一緒に、ボクはチュートリアルルームで遊んでいた。
『ハルノっ!わたしに名前くれてありがとーっ!わたし、とっても嬉しいわ!!』
「気にしなくて良いのです!ボクとお揃いで、ボクもとっても嬉しいのです!」
さっきまで、追いかけっこをしていたのだが、二人とも少し疲れてしまい、アルはボクの肩に座って、休憩しながらボクとお喋りしていた。
「あのぅ、すみませーん」
そこへ、声をかける見知らぬ女性。誰あろう、元ナビ妖精設計担当である。
「どちらさまなのです?」
「えーっと、お邪魔してすみません。私はゲームマスターのSと申します」
「Sさんなのです!ボクはハルノなのです!何かご用なのです??」
ボクはGMが訪ねてきたのが不思議で、小首を傾げながらSさんに問いかけた。
「かっ、かわっ……。し、失礼しました。えーっと、ハルノさん、今回はそちらにいる妖精の件でお伺いさせていただきました」
「アルです?お友達になったのです!!アルがどうかしたのです?」
「っ…、大変申し訳…ございません。今回あなたがナビ妖精――アルさんをテイム出来たのは、運営側の不具合によるものなのです。本来アルさんはテイムできる存在ではありませんでした……」
Sさんが言葉を紡ぐ度に、ボクの顔は曇って行った。
「それって……アルと…お別れ……しなきゃなのです?」
事情を察して悲しくなってしまい、半泣きのままSさんに質問を返すが、返事を聞く前に泣き出してしまった。
「う、うわぁぁぁん!アルとお別れなんて悲しいのですぅぅぅ!!!寂しいのですぅぅぅ!!!」
もう、既に号泣であった。釣られてアルもボクの頬に抱きついて泣いている。
「あぁーー、泣いちゃった!泣かないで!!お願い!!
ちょっとっ!!みんな見てるんですよね!!助けて!!あやすの手伝ってぇぇ!!」
Sさんは耳に手を当てながら、運営のモニタールームに音声を送る。一拍置いて反応があり、さらに男女一名ずつ、この混沌とした、チュートリアルルームへとやって来た。三人がかりで何とか話しができるまで、ボクを宥めていた。
「えっとハルノ?ちゃんでよかったかしら?」
Sさんと別で来た女性が、ボクに尋ねる。彼女もゲームマスターの一人でCと名乗った。もう一人の男性はKさんだそうです。
「ぐすっ……ちゃん…付けは…ひっく…ヤ……なのですぅ、ぼ、ボクは男…の子なの……ですぅぅ……ぐすっ」
その台詞にその場の三人、及びモニタールームの全員が凍りついた。おそらく心は一致していただろう。
(((((男の娘……だとぉぉぅ!!!)))))
「ご、ごめんなさいね?ハルノくんと呼ばせてもらうわね?」
Cさんの問いかけにボクはコクンと頷いた。
「ハルノくんは今日は一人でここに来たの?保護者の方はいらっしゃらないのかしら?」
このゲームは中学生未満の子どもは、保護者同伴で無いとログインさせないように、説明書に記載されている。だがしかし……。
「?ぐすっ、ボクは一人で…来たのですぅっ…高校生なのでぇぇ……」
ボクの台詞に運営一同は、再び凍りついた。その心もまた一致していたであろう。
(((((合法……ショタだとぉぉぅ!!!)))))
運営一同はそう思っていたが、高校生はまだ未成年なので、合法ではない。まぁ、時間の問題ではあるが。
先程の男の娘の衝撃が抜けないままに、新たな衝撃を受けたCさんは起動せず、Sさんに至っては鼻血を吹いて倒れていた。二人に先んじて再起動したKさんがボクに話しかける。
「落ち着いて聞いて欲しいっす…大丈夫すか?。今回は運営側のミスであることを考慮させてもらったっす。なのでアルさんの人格AIを保護した状態で、テイム状態を継続する上で問題だった、人格AIにインストールされているチュートリアルプログラムを削除できるよう尽くすっす。かなり難しい作業なので、少しばかり時間が欲しいんす。理解できてるっすか?」
Kさんの言葉をボクはしっかりと理解しました。
「またアルと会えるのです!ならちゃんと待ってるのです!うんえーさんたちとボクの約束なのです!」
既に人格にプログラムが結び付いてしまっているため、人格AIを傷付けないよう、慎重に作業しなければならない為、三日、時間をもらうことをKさんはボクに、優しく伝えてくれた。そして、感極まったボクはKさんに抱きついた。
「ありがとなのですぅ!!!」
三度、運営一同は凍りついた。Kさんは思考停止していたが、他の者の心は一致していたと思う。
((((羨ましいっ!!そこ変われぇっ!!))))
その後、元ナビ妖精のアルによって、キャラクリ及びチュートリアルは終了するのだった。
VRMMOで友達作り〜ボクは男の子なのですぅっ!!〜 ましろ @mashiro11
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