第3話

本当に恐ろしいものは何なのだろう。人によって変わるこの問い。地震などの自然災害・お化けなどのオカルト、人それぞれの返答があるだろう。しかし、本当に恐ろしいものはわからないことである。それが何なのかわからないものこそが恐ろしいことだと思う。


 これは、僕が学生の時に体験した不思議な出来事の話。当時高校1年生だった僕は、サッカー部に入部しようと考えていた。そこで、後に親友となるAと出会う。Aとはとても気が合い、漫画の話・海外サッカーの話・日本代表の話など盛り上がる話題ばかりだった。意気投合し、学校の登下校もいつも一緒だった。

 きつい練習や楽しい思い出を過ごしていると、夏の大会まであと一週間になっていた。僕とAは小さい頃からサッカーをしていたので、先輩たちからポジションを奪うことに成功した。練習試合でも最強コンビだった僕とAは、地区予選は優勝だと確信していた。

 大会当日、お互いスターティングメンバーに選ばれ、Aがアシスト、僕が得点を決めるという連携は最強だった。地区予選では、ほとんどの試合でハットトリックの活躍だった。予想通り難なく地区予選は優勝だった。次は県大会。顧問はリフレッシュのためにと、2日の休日をくれた。家に帰るとイケオジという言葉が似合う父と、子供の僕から見ても美人だと思う母と、まだ中学生だが美少女という言葉が似合う妹が祝福してくれた。おいしい夕飯を食べ終えて自分の部屋に向かう。ベットにダイブし、寝転がる。なんて完璧で幸せな人生だろう、あとは可愛い彼女ができれば最高だなぁなんて考えていた時、Aから連絡が入る。内容は学校で、1番かわいいと話題のBちゃんと学校1美人と言われているCちゃんとAと僕の4人でプールに行こうというものだった。最高だ。行くとすぐに返信した。Aは前からCちゃんのことが好きと聞いていたので、僕はBちゃんとイイ感じになれたらいいなぁなど考えながら寝ることにした。

 当日、Aのナイス判断で、AはCちゃんと僕はBちゃんと二人になる時間ができた。するとBちゃんの方から告白され、無事に付き合うことができた。これで最高で完璧で幸せな青春を送れると感じた。Aのほうも無事成功し、2つのカップルが誕生した。

 時は過ぎ、夏の県大会は優勝、全国大会は惜しくも3位だったが、僕は大会MVPに選ばれる活躍をすることができた。お互いのカップルの方も順調で、何度かダブルデートしたり客観的に見ても勝ち組と言える日々を送っていた。秋になり、3年生が引退し、新体制で初めての大会が迫っていた。

 ある日、朝練に向かおうと朝5時に起きた。自分の部屋を出て、階段を下りる。いつもなら起きている父と母の姿がない。寝室を確認しても、姿はなくそれどころか妹の姿も見当たらない。電話してみても現在使われていないと意味不明な回答が返ってくる。祖父にも祖母にもAにもBちゃんにも電話をしたが、同じ回答が返ってきた。訳も分からずパニックになったが、一旦落ち着いて、学校に向かうことにした。学校には、Bちゃんはさすがに朝早すぎて来ていないかもしれないが、同じ部活のAは絶対にいると思ったからだ。 

 学校に着くと朝練の準備をしていた。とりあえず近くにいたマネージャーに話しかけた。見ない顔だったが新しく入ったのだろうと気にしていなかった。「Aいるか?」そう尋ねるとマネージャーは「A?誰ですかその人。ってかあなたは誰ですか?」と聞き返された。自分の名前を答えたが、そんな人はサッカー部にはいないと言われた。

 その後、学校にも自分含めたA・B・Cの4人が生徒にいないと言われた。警察に来てもらい、そのまま市役所に行ったが、僕の戸籍自体存在しておらず、家に帰るも朝、確かにあった家がなくなっていた。僕は施設に入ることになった。その後、今の父と母に養子にしてもらい今も生きている。


  あの秋の出来事は何だったのだろうか、わからなくて恐ろしい。

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@harujyao

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