On your mark!

えーあいキッズ

On your mark!

「遂に来たね、決勝」


「そうだね」


「あれ、もしかして緊張してる?」


「不思議だよね。五年も練習を重ねているのにね」


「しおりはずーっと変わらないね。五年前からその貧乏ゆすりとか」


「ふふん!貧乏ゆすりは私のルーティーンのうちってね」


「はいはい。アップは順調?」


「まあ、コンディションは結構良いよ」


「それならいいけど。予選ではスタートで少し失速してたし、いつものしおりらしくないんじゃない?」


「・・・やっぱりあゆみには敵わないな〜 誰にもバレてないと思ってたんだけど」


「何百回しおりの練習を見てると思ってるの! ついでに言っとくと、しおりがスタートで失敗したことまだ引きずってるのも分かってんだから」


「流石は私の専属マネージャー! ・・・・なんて言ってる場合じゃないよね。最後の試合で悔しい思いをしたくない」


「まあまあ、スポドリ飲んで落ち着きなって。飲んだらすぐにスタート練習始めるよ」


ごくごく……


「ありがと。気持ち切り替えるね」


「よし、スタート練習始めよう」


「うん、やろう! スタートライン、久しぶりに立ってみる?」


「・・・・最後だし立ってみようかな」


「こうして二人でスタート地点に立つとあの時を思い出すね」


三年前、私たちは都大会の出場権を獲得し、本番に向けて練習を重ねていた。



「一レーン、二レーン通ります。行きます。よーいはい」


たたたた……


「あゆみってスタートの加速、速いよね」


「あなたが遅いのよ。それじゃ全国なんて通用しないって、今のままだと関東も厳しいよ」


「私は都大会に出れるだけで満足だよ」


「タイム的にも全国には届いてないしね・・・」


「そっか・・・。じゃあ、私は全国目指すことにするよ」


「全国って・・・。都大会には出れるけどさぁ」


「私が全国目指せば、しおりも全国目指すでしょ」


「・・・そうだね。あゆみ、私と一緒に全国目指そう!」


「うん! 約束ね」


こうして私たちは都大会を突破し関東大会に駒を進めたが、全国には届かなかった。


「やっぱり全国は難しかったね。だけど、来年出場したら全国行ける気がした。来年も一緒に全国目指そう!」


「うん! 同じ組で出場したいね。・・・ってて・・・・・」


「足怪我したの?大丈夫?」


「大丈夫、ひねっただけだから」


「すぐ病院で診てもらいなよ?」


「分かってるって!」


次に見たあゆみは松葉杖をついていた。


「あゆみどうしたのその足!」


「実は・・・私、しばらく・・・走れないみたい」


「走れないって、全国目指す夢はどうするの!」


「・・・・・ごめん、約束・・・守れなくなっちゃった・・・・」


「だけどね!決めたの。今まではしおりと一緒に全国に出たくて練習頑張ってきたけど、今度はしおりが全国に行くためにお手伝いをしたいって思ったの!・・・・私はしおりが全国で走る姿を見たいの。お願い!私にサポートをさせて!」


「・・・うん。私、本気で全国目指すよ! ガンガン頼っちゃうからね、あゆみ」


「うん。任せといて」


こうして3年後、あゆみと共にインターハイの決勝までたどり着いた。




「行きます。よーいはい」


たたたた……


「ファイト! 本番をイメージして」


「今のが本番に出せたらいいね」


「うん!絶対に本番でこの走りをしてみせる」


「そろそろ時間だし招集場所に行きましょ」


「でもその前にさ、背中にゼッケンつけてよ」


「もー、早くゼッケンつけておいてって何回言わせたら気が済むの?」


「そんなに怒らないでって専属マネージャーさん。これも私の大切なルーティーンの一つなんだって。」


「まったくもう・・・・」


「ありがと」


「そろそろメイントラックに行くよ」


「その前に、ちょっと、いい?」


「どうしたの?」


「三年前からずっと私のことサポートしてくれてほんとに感謝してるの。あゆみ、ほんとにありがとう」


「突然改まってどうしたの?」


「そうだね。でも言いたくなっちゃって」


「なら、私も言わせてもらうけど、しおりと全国の会場に一緒に来られたことがとっても幸せだよ! しおりの専属マネージャーになって本当によかった!」


「うん! ありがとう。じゃあトラックに行こうか」


「ねえ、あゆみ」


「最後にいつものおまじない、お願いしてもいい?」


「・・・いいわよ」



「うん。サイコー!」


「じゃあ、行ってくるね」


あゆみと共に掴んだ舞台、絶対優勝してみせる!




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