本編
本編
耳元で少女の声がささやく。
『来てくれたようじゃな』
辺りを見渡すが近くに少女の姿は無い。
『くふふ。こっちじゃ、こっち』
『うーむ、お主とは波長が合わないようじゃな。まあ、別に姿が見えんでも
『何?
『こほん、お主を呼び寄せたのには訳があっての。最近の人間達は、お主が今持っている機械の板に魂を奪われつつあるのじゃ』
『うんうん。えーっ! なんじゃと⁉︎ と思うじゃろうが事実じゃ。余の知り合いの妖怪や神達から、このままでは我々の存在を忘れてしまい、本来の力を失ってしまう……そこで、余達は機械の板の人間の心を奪う力を逆に使ってやろうと考えたのじゃ!』
『機械の中に入れる仲間が入って人間を誘い出し、余達の来て欲しい、もっと盛り上げたい場所に来てもらうという、ジョウホウナンチャラシステムの友好的な活用を考案したのじゃ』
『お主は
①
『この喜多院では、
『こんな話しがある。昔、夜遅くに喜多院を訪ねてきた、余のように超絶美しい女が居たそうな……女は当時の
(ゴーン!)※鐘の音
『美しく響く鐘の音と、時を同じくして美女は竜となり、天に上がったという』
(ゴロゴロ)※雷雲の音
『更に不思議な事にすぐにもう一度鐘を鳴らしてたら、何度も何度も叩いても鐘の音は響かなくなった』
(ゴン、ゴン、ゴン) ※鐘の音
『以来、喜多院では鐘や鈴を鳴らすのを禁じたとな。現代風に分かるようしてみたが、どうじゃ? 余の超絶美少女ボイスと合わさって
②
少女がプロのバスガイド口調で、
『右手に見えますは、1825年の江戸末期に完成した五百羅漢です。五百羅漢とは、一切の
『なんじゃ、怖いのか? 噛みついたりせん……よーく、よーく、よーく見てみよ』
(ポン!) ※
『ぷぷっ! こんな子供だましに引っかかりおって、ビクッとしおった!』
『主は面白いのー。で、ここの五百羅漢像には、不思議な話がある。一つ一つ頭を撫でていくと、一つだけ妙に暖かい像がある。その像に印を付けて……おい、マジで触ったり印を付けるでないぞ? 本当にやったらポリスメーンとやらに通報するぞ? 夜中に見に行くと、主の近しい亡くなった者の顔に変わっているそうじゃ。ちなみに夜中は入れんから見れんがな』
③
『ところで、この喜多院には他と違う部分がある。何か分かるかの? シンキングタイム、10秒じゃ。チッチッチッチッチッ、ブッブー! 時間切れじゃ、何? まだ5秒? 余の10秒は人間の5秒くらいじゃ。あの赤い門の周りに
『目の前にある建物は鐘楼門という』
(ゴロゴロゴロゴロ) ※雷の音
『外側には
(ゴルルル……ギャアース!) ※龍の鳴き声
『次は内側を見てみよ』
(ピュイー!) ※
『見事な鷹の彫刻が2匹あるじゃろ? この彫刻は江戸初期に活躍していたといわれる
『昔、日本中を旅しておる人間達から左甚五郎にまつわる話をよく聞いておったよ。ちょいと待っておれ……余の脳内でーたあかいぶとやらに、小話があったはず』
(ぽく、ぽく、ぽく、ぽく) ※木魚を叩く音。
(ぱん!) ※手を叩く音
『よし、出たぞ。むかーし、むかし、
(ズタダダダダダダッ)※佐吉が走り出す音
『旅の途中、宿屋の主人が佐吉の腕前をみて、左甚五郎に紹介したら佐吉は日光東照宮の山門の猫を彫る事になった。佐吉は見事な猫の彫刻を完成させ、日光東照宮も完成した』
(ぱちぱちぱちぱち)※拍手の音
『仕事に関わった者達全員で、
(ゴルルル、ガシャーン!) ※獣の唸り声→
『この
(カーン! カーン!) ※ノミを打ち込む音
『左甚五郎は、佐吉の腕を認めて飛騨の甚五郎という名を与えたそうじゃ。今でも
『……おっ、察しが良いの。先程、余は眠り猫は左甚五郎が彫ったというたな? あれあれ? 佐吉じゃ無いんかいって思うじゃろ。そもそも飛騨の甚五郎がなまって左甚五郎と呼ばれたなど、同じ話でも沢山違う話がある。人から人へ
『世の中は嘘か本当か分からん情報ばっかりじゃ。
⑤
『平安時代の頃だったか、
『ある日、大使が座禅をしておると、部屋の外に怪しい影が現れた』
(ギシ、ギシ、ギシ) ※木の床を歩く音。
『大使は尋ねた、誰かおるんか? すると、今も世の中にたくさんある悪い病気の神、
(べべべん!) ※
『この鬼の姿を弟子に写させ、
『ん? あれ、そういえば余も一応、鬼ではあるが……もしかして余でも出来るのではないか⁉︎ おい、疫病神の方ちゃうわ!』
④
『この喜多院の境内では、食い物や飲み物が売っておる。ほとんどの寺は境内での飲食禁止としておるのに不思議じゃろ』
『人間が考える小難しい話は余も分からんが、要は神様と同じ物を腹に入れて、ご加護を受けるという考えなのかもしれん。だからと言って、酒を外から持って境内に入らない方が良い。……何故って? 酒は神様に捧げる物じゃ、それを盗んだと勘違いされてしまうやもしれん』
(しゃりん、しゃりん、しゃりん) ※沢山の鈴を鳴らす音が段々と近づいてくる。
『神様とは本来、マジで恐ろしい存在じゃ。酒は神様に捧げる物で分かりやすく例えるならば、お主の家にお主の好きな飲み物を持って行きまーすと約束しておいて、お主の目の前でゴクゴク飲まれたらムカつくじゃろ? この程度のムカつくで、そやつの住む街ごとぶっ壊してしまうような超怖い神様もおるんじゃ。だから、お主もあまり舐めた真似をしておると……』
(しゃりん‼︎) ※目の前で沢山の鈴を強く鳴らす音。
⑤
『他にも本堂の床下に龍を封じた巨大な穴があるとか、血を流す巨大な木があったとか色々あったが、時代の流れにより消失した
『この地には、まだまだ多くの怪談や逸話が沢山ある。お主の機械の板で調べてみるといい。くれぐれも鉄の車や通行人の
鬼娘と名所巡り 黒鬼 @nix77
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