鬼娘と名所巡り 

黒鬼

プロローグ

 プロローグ


 かなり前からオカルト配信者をしていて、応援や要望から視聴者を増やす手段や取材場所を思い付く事もあるけれど、最近は嫌なコメントや汚い言葉が多い。


 配信やめろ、全部CGだろヤラセつまらん、アニメのコスプレしろ、◯◯商店街に居た? 隣の奴は恋人?


 知り合いの配信者達に、どうにか出来ないか相談したみたけど……。


 ゲーム実況の配信者の友達は、『そんなの気にしてんだ。あたしには視聴者コメントなんて公園のトイレの落書きだよ。いちいち真面目に受け取ると、あたしが疲れちゃう」


 最近チャンネル登録者数が爆上がり中のオカルト配信者の二人組は、『それ、僕たちのところにもめっちゃ来るよ。まだ応援してくれてる人がいるから全然マシだね。それよりさ、今度コラボ配信しない? 新作グッズのシャツとか一緒に着てよ。そっちのチャンネルも宣伝するからさー』


 配信者として楽しくやっていたけれど、もう限界。もう全然楽しくない……。


 何でもいいから不思議な事、怖い話、何でもいいから……。


『お主、魂が死にかけておるぞ』


 突然、部屋に少女の声がして振り返ると赤い彼岸花柄ひがんばながらの着物の少女が立っていた。


 腰まである長い白髪、白い肌に赤い宝石のような瞳、驚いた事に二本の角がひたいから生えていた。


『お主は運が良い。駅前の牛丼を特盛で喰ったばかりで腹は減っておらん。の食後のおやつに今すぐ頭から喰われるか、余達の協力をするか選ばせてやろう』


 これは大スクープ! 私の部屋で怪奇現象が!


 急いでスマホを向けるが画面に少女がまったく映らない。


『どうして最近の人間は何でも機械の板に収めようとするんじゃ。美味い物を食った、美しい景色を観た、楽しく友人と過ごした。自分が良ければ良いではないか、どうしていちいち他人に見せたり比べるのじゃ?』


 少女の細い腕が伸びて、胸ぐらを掴まれて軽々と持ち上げられた。


『それほどに注目されたいのならば、こういうのはどうじゃ? 喧嘩けんか。皆が見るぞ、沢山の人間が自分は安全なところで他人の血を見るのが大好きじゃ』


「……‼︎」


 汗びっしょりで目を覚ましてベットから飛び起きた。


 今の……夢……だった?


 スマホに少女が写っていないか確認すると、ダウンロードした覚えのない狐面の画像のアプリが入っていた。


 怪しいので削除しようとすると、勝手にアプリが作動して『川越かわごえ喜多院きたいん』と表示された。


 私は胸騒ぎがして現地に向かった。

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