オセロの世界

@gotchan5

第1話

私は海辺を散歩していた。

冬へ向かうこの季節の太陽は、家路を急ぐ子供の様に駆け足で水平線へと向かうように見える。

辺りもぐんぐん暗くなっていく。

しかし、水平線の向こう側では今まさに朝を迎えようとしている筈だ。

こちらが夜になる時、水平線の向こう側は朝を向かえる。

「表と裏だな」

私は一人呟いた。

そんな感慨に耽りながらふと岩場に目を向けると、そこに何やら黒い物が落ちているのが目に入った。

なんだろうと思い近づいて行くと、それがすっぽりと濡れた男性であることが分かった。

死んでいるのか? 

私は恐る恐るすぐ傍まで近づいた。

よく見るとまだ若いその男の体は、息をしているように動いている。

「ちょっと、大丈夫ですか?」

声を掛けるが返事はない。

溺れて打ち上げられたのかも知れないと思った私はとにかく110番通報をし、倒れている人がいる事、救急車も要る事を伝えた。

5分ほどで救急車が到着し、その後まもなくしてパトカーが到着した。

救急隊員が応急処置をしている間にその男は意識を取り戻したようだった。

そのまま救急車で運ばれていくのを私は見送った。

私は警察から事情聴取され、後でまた聞く事があるかも知れないと言われて解放された。

どうやら私は、独りの男の命を救ったようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る