第66話 ルームシェア
そして3月。
合格発表の日を迎えた。
俺たち三人は、第一志望校に合格した。
俺は、国際文化。
ハルマは、医療工学。
タツオミは、難関大の教育学に進んだ。
教育学は先生になるのではなく、教育自体の研究学問だ。
「タツオミ、向いてるよ。」
「ありがとう。俺は、あの勉強会自体も好きだったし、リョウスケへのアドバイスがいい経験になったんだ。やりたいことが見つかって、良かったよ。」
ただ、俺たちや彼女とは離れ離れだ。
「節目には帰るから、そん時はよろしく。」
寂しいけど、嬉しい別れなら仕方ない。
部屋探しはヒビキさんが手伝ってくれた。
カシワギ先輩も含め、四人で内覧する。
「ハルマ……今更だけど……あの時はごめんね。」
カシワギ先輩が謝った。
「もう、気にしてないんで、大丈夫です。むしろ、リョウスケのこと、ありがとうございました。」
二人はちゃんと和解できた。
おかげでいい条件の部屋が見つかった。
流れで旅行の話も進んだ。
「ゴールデンウィークに、台湾で仕事があるんだ。それのついでに、三人も一緒にいかない?」
急に海外旅行の話が出た。
「ホントに!いいんですか?」
「俺の分が会社から出るし、親日家の相手先の屋敷に泊まれるかもしれないんだ。思ったより気軽に行けそうだな、って。」
海外に行きたい願望がいきなり叶いそうだ。
――――――――――――
入学準備のバタバタが続いて、ようやく入学式直前に引っ越しと荷物の整理がついた。
一人ずつになれるよう部屋自体はあったが、片方に寄せて、片方は物置のスペースにした。
「なんか、ハルマの部屋と変わんなくない?」
「うん、リョウスケにとっては懐かしいかも。」
「……エロい気分になる。」
ムラムラが止まらなくて、ハルマをベッドに押し倒す。
ハルマとこうして抱き合うのは久しぶりだ。
満足するまでキスをする。
すると、スマホが鳴った。
見ると、カシワギ先輩からの電話だ。
いいところだったのに。
「出ないの?」
「ハルマが出て。」
「俺?」
ハルマは言われた通り、俺のスマホで電話に出る。
「もしもし。ハルマですけど。」
『あ、ハルマ?リョウスケは忙しい?』
「リョウスケは……」
ハルマがそう言った瞬間にこちょがした。
「あっ!ははっ!やめてっ!」
ハルマが笑い転げる。
『おい!電話越しにイチャイチャを見せつけるなよ!』
「先輩、すみません。何の用ですか?」
スピーカーにしながら話す。
『いいよ。暇ならご飯に誘おうと思っただけだから。末永くお幸せに!』
そう言って、一方的に電話は切れた。
息を切らせて横たわっているハルマを背中から抱きしめた。
「ハルマ、大好きだよ。」
「……俺も。」
ハルマの甘い匂いを嗅ぎながら目を瞑った。
-アフタースクール 高校生編 完-
アフタースクール 千織 @katokaikou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます