>むしろ、そうでない俺なら、お前は愛してくれたのか?
ここで涙が出ました。
自分の弱さを認めるのは、良太郎にとってはずっと耐え難いことだったでしょうね。
最後の最後で、やっと受け入れて自分を許すことができたんだと思いました。
これまでのように梨の実を割るのではなく、丁寧に剥いてもらった優しい一切れの甘さが沁みました。
作者からの返信
陽澄すずめさま
いつもありがとうございます。
良太郎が今際の際に、己の弱さを認め、気付くシーン、読み取って下さりほんとうにうれしいです。
遅すぎたのかもしれませんが、彼はここでやっと自分の人生と和解したのだと思います。馨を受け入れることは、彼にとって自分を受け入れることでもあったのですね。
いよいよ終章を残すのみとなりました。どうぞ、最後までお読み頂けたら幸いです。
編集済
ここまで夢中で読んでいましたが、ここで思わず泣いてしまいました。本気で。でも良太郎への哀れみの気持ちとも違いますね。なんだろう。やっと許された良太郎への「よかったね」の気持ちかもしれません。
良太郎が今まで馨に向けて来たのは憎しみや情欲でしたが、本当はずっと彼は馨を愛していたんですよね。でも愛し方がわからずに、良太郎は暴力的に振る舞うしかなかった。良太郎が男でいる為には、力を誇示することしかできなかった。そして戦争に負け、男に組み伏せられた良太郎が唯一男でいられたのは、邦正への暴力的な憎しみの感情をずっと持ち続けてきたから。そう思うと、良太郎が愛おしいです。この不器用な男を、白く細い腕で抱きしめてやりたいです。一度だけ良太郎が馨を恋しく思うシーンがありましたが、本当はもっと良太郎は素直になって馨に甘えたかったのかなと思いました。そりゃそうですよね。いくら強くたって、ずっと強くい続けられる人間なんているわけがないんですから。
馨が生きていた頃は、ついぞ心を通わせることがなかったことを私も切なく思っていたのですが、ここで救いを書いてくれたことに感謝します。良太郎自身は「馨は俺が戦地で死んでくれれば良かった」と思っていたようですが、実は馨の方も本当は良太郎のことを愛していたのではないかなと私は思っています。女はやっぱり、自分が一度でも体を許した男を憎みきれないところがありますから(笑)
良太郎は負け続けてきた人間かもしれませんが、自分の弱さを唯一見せられる「妻」という存在を失い、代わりに邦正への憎しみで生き続けてきた彼はやっぱり強い男だったと私は思います。最後まで男を貫いた彼のこと、私は大好きです!
作者からの返信
花さん
本編最終話まで辿り着いて下さりありがとうございます!
はい、ここで良太郎には「許し」を書きました。彼は褒められた人間ではないけれど、それでも必死に足掻いて自分の生を生きたと思うんです。なら、最後に「ここまで生きたことは間違いでない」と少しでも思わせて死んでいってもらいたい。そんな気持ちで書きました。そしてその「許し」は誰によって与えられたのか、は、あえてぼやかす描写です。
そこに心打たれていただけて、本当によかった……。ほんとうにありがとうございます。良太郎を造形しつつ「彼のことはわたし以外誰も好きになってもらえないだろうな」という懸念がありましたから。だから彼のことを花さんが大好きと言って下さったこと、ほんとうに感謝です。
良太郎は不器用で、生涯、暴力衝動に突き動かされて生きて、愛する術も愛される術も知らない男ですけど、そんな彼でも、わたしは最後まで生き抜いたことに「馨」という手向けの花を贈りたかったんですよね……。