四季の詩

蛙鳴未明

季節はぼくらに別れを告げない

季節はぼくらに別れを告げない

気付けば音もなく消えている

影くらい土産に置いていってくれてもいいじゃないか、と言った

季節は何も応えず、ただ微笑んでいた

いつの間にか微笑みは跡形もなく、ぼくらは次の季節を生きている

風の色は変わっていた

色褪せた土手を歩きながら、ぼくらは口笛を吹く

不意に色のない風に揺られて、寂寞をきいた

無色透明の狭間からの風圧は、去る季節のささやきのようだった

ばーか、と鴉が鳴いている

季節はいつも別れを告げない

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四季の詩 蛙鳴未明 @ttyy

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