王女アリスの宮殿脱出計画
滝口アルファ
王女アリスの宮殿脱出計画
雪の降りしきる真夜中の宮殿。
王女アリスは、
自分の部屋で眠ったフリをしていました。
(みんな、眠ったかな……)
アリスは目を開けると、
ベッドから静かに起き上がりました。
すると突然、
アリスの寝室にペガサスが現れて、言いました。
「王女様、
こんな夜中にどこへ行かれるのですか?」
アリスは驚きました。
「あんた誰?
どうやってこの部屋に入ってきたの?
不法侵入よ」
アリスの問いかけに、
ペガサスは目を蒼くして、答えました。
「王女様、もしかして、
この宮殿から脱出しようと考えておられるのでは?」
アリスはギクッとしました。
「どうしてそれを知っているの?
誰にも言っていないのに」
ペガサスは目を紅くして、答えました。
「王女様。
私はこの宮殿を何百年も見守っているのです。
反抗期になられた王女様の考えそうなことくらい、
すぐに分かります。
王女様。
今夜、駆け落ちするつもりでしたね」
アリスは
「なんでそれを知ってるの?
手紙の中の暗号で、
あの人と秘密裏に決めたことなのに」
ペガサスはほほえみました。
「王女様。
勘違いなさらないでください。
私は、むしろ、
この駆け落ちのお手伝いをしたいのです。
ちょうど今、
雪も止んでいるようですし、
私の背中に乗って、
宮殿の塀の外で待っている
お相手の方のところまで、
夜空を飛んで、
お送りしたいのですが、
いかがでしょうか?」
アリスは言いました。
「そう。
じゃあお願いしようかしら。」
ペガサスが翼を下げて、
アリスが乗るのを待っていると、
アリスの笑い声が聞こえてきました。
「ふふふふふ。
この私が、そんな安易な誘導に
引っかかると思った?
私も舐められたものね。
私を乗せて、
そのままあの世まで
あなた、
ただのペガサスじゃないわね」
ペガサスは狼狽えました。
「いいえ。
私は本当に王女様のためを思って……」
アリスは遮って、言いました。
「もういいわ。
あなた、本当は魔女なんでしょ。
ペガサスに化けた魔女なんでしょ。
もう白状しなさい!」
ペガサスは目をピンクにして、言いました。
「さすがは、未来の女王様。
なんという慧眼の持ち主!
参りました。白状いたします。
ご推察のとおり、
私は、魔女です。
ペガサスになる呪文をかけられた魔女です。
王女様。
あなたをこの宮殿から拉致してくるように
命令されたのです」
アリスは、冷静に言いました。
「可哀想なペガサスさん、
いや、魔女さん。
いったい、あなたにそんな命令をしたのは、
誰なの?」
ペガサスは銀色の涙を流しながら、答えました。
「それは、死神です。
そしてその死神は、
私の恋人です。
さらに申しますと、
あなたが駆け落ちしようとしようとしていた
お相手こそ、
その死神なのです」
アリスはびっくりしました。
「まさか、あの人が死神?
勘の鋭い私でも気が付かなかったわ。
そうすると、
今夜の駆け落ちも、
王女である私を連れ去ろうとしていたのね」
ペガサスは言いました。
「さすが王女様。
仰るとおりです。
しかし、宮殿の警備体制が思った以上に
厳しかったので、
王女様の宮殿脱出も難しそうだと考えた死神は、
私をこの部屋へ送り込んだという次第です」
アリスは少し考えて、言いました。
「なるほど。
そういうことだったのね。
私、危うく死神の餌食になるところだったわ。
ペガサスの魔女さん。
勇気を振り絞って告白してくれて、
ありがとう」
ペガサスは申し訳なさそうに言いました。
「いいえ。
私は王女様に感謝されるようなものではありません。
むしろ、
王女様の命を狙った死神の共犯者なのですから」
アリスは言いました。
「ペガサスの魔女さん。
これからどうするの?
あなたにかかった呪文を解くことは出来ないけれど、
よかったら、この宮殿の庭園で暮らさない?
死神もこの宮殿の中には、
何か結界のようなものを感じるのかしら、
入って来れないみたいだから」
ペガサスは言いました。
「そうさせていただけると、
私としては、嬉しい限りです。
実は、日頃から、
死神のDVに苦しんでいましたので、
この宮殿の庭園をシェルター代わりにして、
毎日暮らせたら、どんなに幸せか……」
アリスは女神のようにほほえんで、言いました。
「そうしなさいよ。
私だって、毎日、
あなたと庭園で遊んだり出来たら、
最高だもの」
アリスの神対応によって、
ペガサスの魔女は、
宮殿の庭園で、
死神の恐怖から免れて、
平和な日々を過ごすようになりました。
一方、
恋人の魔女に逃げられて、
意外とメンタルの弱かった死神は、
傷心旅行として天国に出かけたらしいと、
アリスは風の便りに聞いたのでした。
王女アリスの宮殿脱出計画 滝口アルファ @971475
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