半グレは終わらない


「『女神の騎士』と『ミンミンとその仲間達』との一戦は 無効試合となりました! 代わりにこの時間は女神の騎士VS獣人アイドルエルザたんとの戦いになります!!」


「みんなーー! エルザたんを応援してね!! みんなの応援が私を強くするんだよ〜〜!」


……

…………

……………


エルザたんは可愛いけどそんなに強くなかった。

いや、それはどうでもいい。


ミンミンたちは闘技場に来なかった。

あんなに張り切っていたのに不思議だ……。


「はぁ、せっかく楽しみにしてたのに残念です……」

「プリム、仕方ないのじゃ、次の死合頑張るのじゃ」

「ユウヤ、あっ、セイヤ、その、終わったらみんなでお子様ランチを食べに行かないか? 私はあれが気に入ったのだ」


そういや、マリと俺は話すことが出来たんだ。

……簡単に説明するだけで終わる予定だったのに、なんだか色んな事が起きたんだ。


走って逃げるマリを追いかけて、盗賊の一味と遭遇したり、2人で壊滅させたり……、うん、色々あったんだ。


マリはもう大丈夫だ。俺がユウヤであり、セイヤでもある事を理解している。

それに、マリも一度死んだ身だ。


……名前変わってねえけど名字が変わった。オルランドとかいう名字になっている。


「とりあえず飯食いに行くか。時間があったらアイツラのハウスにでも行ってみるか? 誰か場所知ってるか?」


「はいはいっ! 私知ってます! この前スコーピオンさんが教えてくれました。えへへ、お菓子とお茶をごちそうになりましたよ!」


「……プリム、気をつけろ。あいつはもしかしたらロリコンかも知れない」


「ほえ?」


「うむ、あやつはプリムの前に立つと赤面するのじゃ。まあプリムは可愛いから仕方ないのじゃ! それより、今日もデザートでプリンを――、むむ? あやつは……」


クリスの視線の先にはスコーピオンがいた。

いつもと様子が違う。右手が欠損してるし、身体から煙が出ている。


「クリス!」

「うむ」


俺達はスコーピオンの元へと走るのであった。





「俺の、傷なんて、どうでもいい、頼む、お前らにしか、頼めない」


「喋っちゃ駄目なのじゃ!! くっ、なんじゃこの傷は? 高温で全身が焼かれて、切り傷だらけなのじゃ……。すぐに回復させるのじゃ!! ……回復させても火傷が治らない、火が消えないのじゃ……」


「そうだ、クリス。さっきエルザたんを倒して闘技場の景品で手に入った『女神の雫の欠片』を使うんだ」


「そ、そうなのじゃ! 我もレベルアップするのじゃ!」


クリスが女神の雫の欠片を使う。光に包まれて、クリスの存在の格が上がる。


クリス、レベル43、聖戦女神――


「む、ちょうどよく回復に特化した聖戦女神に変わったのじゃ!! これなら――」


クリスが必死に回復している時、プリムが俺の袖を引っ張る。


「あ、あの、この傷……、もしかして……、お姉ちゃんが絡んでいるかも知れないです……」


「プリムの姉ちゃんってあの七大勇者ギルドの序列二位、「烈火の焔」のアルテミシアか?」


プリムは身体を震わせて不安げな表情だ。

一体アルテミシアってのはどんな奴なんだ?


と、その時、スコーピオンがクリスの回復の手を止めた。


「こ、これだけ回復、出来たなら十分だ。すまねえ……。頼みがある、俺達のパーティーを、俺達の幼馴染を、助けてくれ……。俺だけ、ミンミンの空間魔法で……、頼む、お前らしか頼れる奴が、いねえんだよ……」


スコーピオンが早口で俺達に説明を始めた。


デスピサロ島の4戦士は島の幼馴染で友達。

女神ウラノスとの契約により、女神ウラノスギルドの駒として生まれ育った者たち。


今回、他のギルドが気がつく前に女神クリスを拉致するはずであった。それを失敗したスコーピオンたちは上司に呼ばれて懲罰を受ける事になった。


ウラノスギルドは女神ギルドの中でも比較的新興の部類に入り、力を増大させているギルド。


冒険者ギルドがバックボーンのキャンサーたちとは違う。

ゴールド闘技者たちが集まるアクエリアスのギルドとも違う。


ウラノスギルドは、この帝都の闇を抱えているギルドだ。


「シンジュク区の、カブキ城、が、あいつのハウス。……頼む、ミンミンたちを、助けてくれ……」


そこでマリが口を挟む。何やら難しい顔をしていた。


「む、確かにそれは難儀な事だ。助けを呼ぶのも頷ける、が、もしもこれが罠だったら? スコーピオンは上司に言われて私達、クリスを誘い出して処分する可能性もある。闇ギルドならジャミロの制約の裏をかくのかもしれない」


マリの意見も正しい。俺達とミンミンたちは敵同士。

本来なら敵の数が減るのは喜ばしい事だが……。。






「そうよ、あんたたちは行っちゃ駄目よ。特にウラノスギルドは厄介だから関わらない方がいいわ」


騒ぎを嗅ぎつけたジャミロがこの場に現れた。


「ジャミロ……」


「可哀想だけど、これも運命よ。ウラノスギルドの構成員が内部処理するのは日常的な事よ。他の島から戦士を送り込めば補充が出来るわ」


「んだよ、それ……、じゃあミンミンたちは……」


「ええ、死んでいる可能性の方が高いわ。だから行っちゃ駄目、今のあんたたちじゃウラノスギルドの構成員には勝てない」


スコーピオンが俺の腕を掴んで懇願する。


「ま、まだ、死んでない、はずだ。じ、実験を、すると、言っていた」


「……わりい、ジャミロ。やっぱ見捨てられねえわ。ちょっと殴り込みかけてくるわ。どうせ戦わないといけない奴らなんだろ? なら、少し時間が早くなっただけだ」


ジャミロは大きくため息を吐いた。


「今度ばっかりは、手助け出来ないわよ……。それでも行くなら……」


ジャミロが俺を手招きする。俺がジャミロに近づくと……、お尻を触られた!?


「……ウラノスギルドは帝都の闇ギルドを束ねているわ。幹部の一人は七大勇者ギルド序列二位、『烈火の炎』アルテミシア、闇ギルド『半グレ』のトップでもあるわ。あの性悪女は女神の文様がないから私の制約から外れている。あんたたちを殺しにかかるわよ。絶対に死なないでちょうだい……」






あとがき


ここで一旦終了します!

理由としてはカクヨムだけではなく、なろうでもあまり人気がなかった事が大きいです。

あとは、やっぱり『おもちゃ』『リセット』からの『手遅れ』『誤解』の流れの作品が書きたくなったからです。

ファンタジーはイベントが多いのでスラスラ書けるけど、心が突き刺さるような感じにはなりません……。

他の作品は一話一話を書き終えた時、魂が抜ける感じでした……。


軽いラブコメやコメディは息抜き程度です。


というわけで、次回作は心が痛くなるシリアスラブコメ作品です。

少し休んでから頑張りますのでよろしくお願いします!









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俺だけレベルという概念が存在しない〜〜レベルが低いと言われ追放された俺は、女神の騎士でした うさこ @usako09

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