プリムの武具の確認

「若いっていいわよね〜。あたしだって結構イケてると思うんだけど、セイヤ、どう、やっちゃったの?」


「お前は下品なんだよ!? お、俺は、別に……」


「ふふ、冗談はほどほどにしておいて……、本題よ」


 ジャミロが真剣な顔に変わる。

 俺達もちゃんと話を聞く事にした。


「あのね、あたしって結構卑怯な性格してるの。だから、『女神の騎士』パーティーには死んでほしくないのよね〜。ぶっちゃけただの贔屓よ。セイヤ、可愛いし」


「お、おう……」


「さっきレベルの話ししてたでしょ? このメスガキはレベル72。まあまあ強い程度のレベルよ。例えばハーデスはレベル120、異世界から来たタナカケンザブロウは132、ゼウスの化身は122、アクエリアスとキャンサーは102って感じね」


 今度はコーラを吹き出さなかった。あまりにも想像以上のレベルだった。

 驚くよりも、どうすれば対抗できるか、という事に思考が行く。


「うん、いい感じね。流石イケメンよ。いえ、単純なイケメンならハーデスが一番だけど、あんたは未知数のイケメンなのよ」


 ……例えがわかりづれえ……


「他の女神ギルドの連中も化け物揃いよ。それでね……」


 ジャミロは俺の装備を見ていた。ブロンズランクとしては高価な装備品。鍛冶屋に作ってもらったものだ。


「装備品の強さが違うって事か?」


「ええ、そうよ。女神ギルドの連中の武具は特別なのよ。――ミンミン、見せて上げなさい」


「え、あっ、はい!」


 ミンミンは深呼吸をする。すると、着ていた中華服が中華風鎧へと変わる。両手にはガントレットのようなものを装着していた。

 ……アクエリアスと一緒だ。何もない所から武具が出てきた。魔法剣の一種か?


「なんだこりゃ……?」


「メスガキにしては良い『女神武具』ね。これは女神の加護を得ている者だけの専用装備よ。レベルに応じて強くなる代物ね、壊れても時間が経てば修復されるわ」


 レベル……。俺、レベル、ない。

 動揺を隠してジャミロに聞く。


「な、なるほど、これがあれば他の装備はいらねえな。どうやって手に入るんだ?」


 ジャミロに聞いてながら俺はふと思い出した。何もなに状態から剣を召喚した事を。

 あれが女神武具?

 あの日以降、召喚に成功したことはない。何かの間違えだったと思っていた。


「うーん、女神の加護を持っている者なら、『女神の試練』を乗り越えれば手に入るわよ。そんなに難しくないわよ」


 ミンミンが挙手をする。


「はいはい! 私はデスピサロ島で仲間同士の殺しあいで……、武具を、奪い合って……」


 俺はなんとも言えない気持ちになりミンミンの背中をさすった。

 別に同情してるわけじゃないが……、何かそうしたくなっただけだ。


 クリスは首をひねる。


「むむぅ? なんじゃそれ? 女神の試練? ちょっとわからんのじゃ……」


「大丈夫よ、クリス。あんたは特別な女神様よ。そのうち『思い出す』わよ。……女神ギルド戦が始まるまでに、あんたたちは絶対に武具を得なさい。そうしないと相手にならないわ。あとは仲間ね」


「マリを含めたら仲間なら四人いるぞ」


 ミンミンが再び挙手をする。


「え、っと、ウラノスギルドは私達以外に主戦力4パーティいるよ。それに文様を持っていないけど関連ギルドもあって、総勢1000人はいるかな」


「マジ?」


「そうね、例えばキャンサーはハーデスよりもレベルが低いけど、ギルド員は10000を超えているわ。冒険者ギルドの力も使える。といっても、その中で女神ギルド戦で戦えるのは文様を持っているものだけ、せいぜい数パーティーよ。ねえ、セイヤ、今ならまだ間に合うわよ……、あんたがクリスを何処かのギルドに献上したらそれで終わるわ」


 ……俺はコーラを飲み干した。



「冗談は頭だけにしてくれジャミロ。俺はクリスの騎士だ。どんな相手でもぶっ飛ばしてやる」


 クリスははにかんだ笑顔を俺に向けてくれた。


「えへへ、照れるのじゃ……。なんか嬉しいのじゃ、天界では皆から疎まれ、幽閉され……、下界でやっとみんなに会えたのじゃ。我も強くなる、だから、頑張るのじゃ」


 ジャミロは「ふっ」と笑って立ち上がる。


「あんたたちやっぱり良いわね。女神はこうで無くちゃね。また聞きたい事があったらいつでも言ってね! 私は修練所にいるから」


 ジャミロはそう言って去っていった。

 そして、ミンミンも――


「あっ、やば、私達上司に呼ばれてるんだったんだ……。てへ、謝れば許してくれるかな……? えっと、セイヤ、来週闘技場で会おうね!」


「おう、負けねえぞ!」


「えへへ、バイバイ」


 そして、俺達は再び三人となる。

 プリムは途中で眠くなって寝ていた。最近はずっと戦っていたから疲労が溜まっていたんだよな。


 クリスはブツブツと独り言をしている。


「女神の試練、得体の知れぬ武具……、姉者のギルド……、ヤクザ……、闇ギルド……、なにか生まれてきそうなのじゃ……」


 とりあえず見守ろう。



 ****




「あっ、私、その武具わかるかも知れないですぅ!」


 宿屋に戻り、俺とクリスは今後のレベルアップ計画を話していた。

 途中で目覚めたプリムにジャミロが話したことを説明した。

 プリムはふんふんと頷いてその言葉を口にした。


「あ、あのアクエリアスさんと戦った時、身体の中からポカポカになったんです。実はその時、ブロードソードが氷で壊れちゃって……、でも武器が欲しくて念じたら手の中にありました!」


「な、に? じゃあ最近装備してたブロードソードは……、ちょい待て、今パネルを見てみる」


 装備の項目なんてあったのか?


 プリム、レベル43ジョブ重騎士ベルセルク。


 レベル上がったな……って、ベルセルクってなんだよ!? 最近確認してなかったから全然知らなかった……。


 えっと、装備はスキルの項目の下に……、このボタンか。


 装備:ベルセルクのブロードソード、鉄の鎧、(ベルセルクの鎧)


 このブロードソードは今プリムが手にしているものか。レベル118のアクエリアスの身体を貫くほどの力を持っている。

 鎧は括弧になってるな。装備してないって事か。


「プリム、鎧を装備してみてくれ。ベルセルクの鎧って書いてある」


「は、はい! ぽかぽか、ぽかぽか〜! ていっ!!」


「お、おおぉ! かっこいいのじゃ! 鬼も逃げ出しそうなのじゃ!」


「えへへ、これすっごく軽いです!」


 ……瘴気というか、覇気というか、凄まじい威圧がプリムから発せられる。

 真っ赤な鎧は禍々しくさえも思える。


 パネル――

 ベルセルクのブロードソード:基礎攻撃力300%、自己の力、速度に応じた追加ダメージ、女神スキル『圧殺』


 レベルセルクの鎧:基礎防御力300%、ダメージ反射、女神スキル『暴虐』


「単純計算でレベルの三倍の強さになるのか……。やべえな」


「ふうふう、ちょっと、これ、疲れますね……。とっておきの時しか着用しない方がいいかも知れないです。あっ、この剣もそっか! だから最近疲れやすかったんですね。えい、収納!」


 ……少し才能の差を感じてしまう。

 とにかくプリムは剣と鎧を出すことができる。俺は一度出したが、再び召喚するのが難しい。


「クリスはどうだ? 女神武具を持ってそうか?」


「うーむ、我には女神の雫の欠片が必要なのじゃ。……それまでは回復で頑張るのじゃ!」


「りょーかいだ。ていうか、それでもクリスのステータスは高いから十分だろ。……あとは俺とマリか」


 マリも妙な刀を持っていた。多分あれが女神の武具だろう。

 ふう、ちゃんとあいつと話して、仲間になってもらおう。


 プリムが首をかしげていた。


「そういえばセイヤさんって何で相手に行動の先読みが出来るんですか? この前も、この前も、この前も?」


「ん? ああ、何か時間停止できるらしい」


「……えっと、多分、セイヤさんが一番壊れてますよ……」















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