第7話 AI奥義炸裂(終)


 アイコに先導されるがまま、俺たちは洞窟の奥へと進んでいく。


 増してゆく臭気と、響き渡るゴブリン達の声に、俺は思わず身震いをした。


 烈火ブレイズのみんなは大丈夫だろうか。そんな心配を胸に進んでいくと、大きく開けた場所に出る。


 その中心部に、大きな炎があがり、それを囲むようにしてゴブリン達が騒いでいる。


 

 そして、騒ぐゴブリンたちの目の前には、倒れる二人の少女と、身包みを剥がされたソルの姿が。



「──や、やめろ! 頼む! 俺の事は好きにしていい、だけどこの二人には手を出さないでくれ……!」


「ソル……!」


「いやっ、やめて! 近づかないで!」



 ソルは、身包みを剥がされても尚、二人を守るように前に出る。


 俺は鑑定スキルを使い、三人の状態を確認する。



「全員、魔力が尽きている。この数なら無理もない」



 魔力さえあれば、あの三人ならどうとでもなる。けど、流石にこの数は厳しいか……。


 そしてそれは、俺たちも同じだ。AIイラストを使ってそれなりに強い武器を出せば何とかなるかもしれないけど、加減が難しい。


 その上、AIイラストは一日の内に一回のみしか使えない。


 クソ、一体どうすれば……。



【──ご主人。私にいい考えがあります】


「OK。お前はしばらく黙っていてくれ」

 


 頭を抱えている俺の肩を掴み、主張してくるアイコを冷たく突き放す。


 するとアイコは【む〜】と不機嫌そうに服の裾を引っ張ってきた為、仕方なくその考えを聞いてやる事にした。



「お前、どうせまた碌でもない方法だろ」


【Exactly】


「腹立つなぁ……」



 無表情なのにドヤ顔に見える。そこに若干の苛立ちを覚えつつ、アイコの「案」を聞いてみる。


 するとアイコは、俺の前に「AIイラスト」のアイコンを表示させてきた。



「お前、これは一日一回しか使えないって言ったろ?」


【はい。ですが、ある方法を使えば量産する事ができます】


「量産?」



 何を言っているのかわからず、耳打ちでアイコの案を聞く。……なるほど、やっぱり碌でもない。


 しかし、もはやそれに頼るしかない。

 

 

 俺はため息をつき、手を合わせる。


 アンナとユウミの二人に対する、謝罪の念を込めて。



【では、やるとしましょうか】


「……二人とも。本当にごめんなさい」



 俺は、なるようになれと、アイコの目の前に表示されるアイコンを押す。



【お二人の身体データをスキャン。AIイラストに落とし込み……完了。ではいきます──】



【AIグラビア、発動!】



 その瞬間、アンナとユウミの顔をした、なんか色々と叡智な格好をした女性達が、大量に召喚される。



ごぶっ!?何事。あれは


ごぶぁ!!胸。頭より大きい



 それを見たゴブリン達は、一斉にAIグラビアに群がってゆく。


 リアル体より扇情的になっているから、ゴブリン共が興味を唆られるのも無理はない。


 しかし、彼らは知らない。アイコの手により、戦闘プログラムが入力された彼女達は、異様な硬さと戦闘力を有しており、一瞬の内にゴブリン達を蹴散らしていった。



【ふふふ。叡智な女体でゴブリンを釣り、一気に殲滅。作戦通り上手くいきましたな、ご主人】


「俺はそれよりあの二人が怖くて仕方ないよ。見ろよ、俺たちの事めっちゃ睨んでるぞ」



 彼女らの怒りはごもっともで──俺とアイコは、烈火ブレイズの面々を救出後、それはまぁこっ酷く叱られた。




 ※




 まぁ、叱る程度で済んで良かったけど……これまた一つ、別の問題が起きていた。


 何やら魔物達の洞窟に、叡智な女性が大勢いるとの事で、男性冒険者が群がっていると言うのだ。



【……まったく。男という生き物は、本当にどうしようもないですな】


「元を辿ればお前のせいだよ」



 肉を頬張りながら語るアイコに、癖ついたため息をつきながら、俺たちは今日も元気にクエストへと繰り出した。





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進化した上に擬人化まで果たした「AI鑑定」スキルが、碌でも無さすぎる件について。〜そのせいでパーティーを追放されたけど、AIスキルを活用して何とか生きていきます〜 七七七七七七七式(ななしき) @nanasiki774

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