第6話 翻訳機能


 そして俺たちは、烈火ブレイズのみんながゴブリンの群れに連れていかれたと言う、魔物どもが住み着く洞窟へとやってきた。



 足を踏み込んだ途端、強烈な臭気が漂ってくる。流石、魔物どもが住み着く洞窟だ。



「うっ。この臭い、嗅ぎ続けるのしんどいな。慣れる前に吐いてしまいそうだ」


【おやご主人、大丈夫ですか? 少々顔色が悪いようですが。吐きたい時は言ってください。その時は私がおろろろろろろ】


「お前が吐くのか……」



 何故か俺より先に吐き出すアイコ。こいつ、本当に俺のスキルなのか? 


 疑問は尽きないが、今はそれよりも烈火ブレイズのみんなを助ける事に集中しよう。


 

 俺とアイコは、暗い足元をアイコの眼力ライトで照らしつつ、奥へ奥へと進んでいく。


 するとその先に三匹のゴブリンがいるのを確認し、足を止める。何やらゴブリン語で話し合ってるみたいだが……。



「アイコ、翻訳できるか?」


【エキサイト翻訳なら】


「……ならもうそれで」



 AIによる翻訳機能の向上は、俺が元いた世界でも目を引くものがあった。


 故に高性能な「AI翻訳」を期待していた訳だけど、よりによってそっちエキサイトか……。


 まぁしないよりかはマシか。俺はアイコに、ゴブリン語を翻訳エキサイトさせる。



「──ごぶっ、ごぶっごぶっあれ女。すごい興奮します


ごぶぶ、ごぶごぶ見ただけで射精。頭からいきました


ごぶごぶごぶgobugobugobu…、それは射精です



「おいマジでひでぇなこれ」



 改めてエキサイト翻訳のヤバさを体感する。


 いや、というよりかはアイコの翻訳機能がヤバいのか?


 何にせよ、これだとゴブリン共が興奮エキサイトしてる事しかわからないぞ……。どうすればいいんだ?

 

 俺が考え込んでいると、アイコは頷きながら【あっちですね】と道を指し示し、歩き始めた。



「おい、あの翻訳で何かわかったのか?」 


【え? ああはい。エキサイト翻訳になるのはご主人に見せる時だけなので。大体何言ってるのかわかってます。……私は、ね】


「お前マジでふざけんなよ」



 俺は怒りを抑えながらも、先導するアイコについていく。


 まだ戦闘にはなってないけど、酷く疲れた気がするのは、気のせいだろうか?



【おや、ご主人。何やら顔色が悪いようですが、何かあったんですか?】


「ああ。主にお前のせいでな……」



 俺がそう言うと、アイコは何故か不思議そうに首を傾げた。


 ポンコツとか、そんな次元を遥かに超えたアイコのイカれ具合に、俺は色んな意味で吐きそうになった。


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