欲深い私
LieLie
欲しがり
私は欲張りだ。
それは昔も今も変わらない。
欲しい欲しいと親に何度も駄々をこねた。それに対して、親は厳しくはなかったと思う。駄々をこねた内の三分の一、いや半分だったか、少なくとも良識の範囲で叶えてくれたはずだ。
何故当の私が、その記憶が曖昧なのかと言えば、それ以上に欲しがったからだ。私は昔からとても欲張りだった。
私は他者を非常に羨んだ。最新のゲームで盛り上がる子を羨み、運動ができる子を羨み、友達が多い子を羨んだ。そのどれもが私の持ち得ない物だった。
私の実家は決して裕福でこそなかったが、すこぶる貧困というわけでもなかった。だが、周りが裕福だったのだろう。クラスメイト達はあれがこうだこれがどうだと、新しいものや話題を次々と持ち出した。私はその話についていけなかった。まぁ今思えば仮についていけたとしても、私はいずれ爪弾きにされただろう。私はそんな人間だった。
劣等感に苛まれた私は親に怒った。「あの子達は皆新しい物を持ってる!なのになんで僕にはないの!」と。親は「よそはよそ、うちはうち」と言ったが、これを今の私は恨んでいない。むしろそこまで余裕があるわけでもなく、弟や妹のことも考えれば私の我儘にとても付き合ってくれた方だと思う。
私は自由に遊ぶ時間をたくさん欲しがった。宿題も真面目にやったことなんてなかった。「ゲームは一日一時間」という約束は当然のように破った。約束を破りすぎてゲームを隠されたこともあったが、家を漁って探した。
私はとにかく欲望を抑えられなかった。
中学にもなると、あるゲームにどハマりし、そのゲームの為に朝4時に起きて登校まで遊び呆けた。流石にそこまでのめり込んだ私に親は怒った。当然といえば当然だった。
やがて部活も反りが合わなくなり、反抗期もやってきて不登校になり、私は家で遊び倒した。だが、ただの不登校ではなく私の場合『一度登校したフリをして親が出勤してから帰る』ということをしていた。何故そんなことをしていたかと言えば、親は学校に行けと言ったからだ。それを無視したり罵倒したりする勇気はなかったし、そもそも私は親と別に喧嘩はしたくなかった。
だからわざわざそんな回りくどいことをしてまで家に帰り遊んでいたが、学校側から連絡が来たのだろう。親はゲームを職場に持って行くようになった。それならばと家庭用ゲームを遊んだ。そのコントローラーも持っていかれた。それならばとテレビを見た。テレビのリモコンを持っていかれた。本体のスイッチで見ることはできたが、昼の地上波放送は私にとって面白くなかったので諦めた。私は録画したアニメやバラエティが観たかったからだ。
そんなこんなで色々対策されたが、娯楽に対する欲は消えないどころか、どんどん増大していった。当時同級生達は結構な人数がスマホを持つようになっていた。LINEアドレスを交換し、遊ぶ約束をし、長電話をしたと言う。
私は親にねだった。親は高校生になってからと言った。
私にも交換しようと言ってきた子はいた。持っていないとしか答えられなかった。
別にこれも親を恨んではいない。というか今更だ。それに、私の交友関係を考えれば例えその時交換できたとしても、今もその関係とは到底思えない。
だがその時にしかできなかったことだと思うと、何故自分にはないのか不思議でならなかった。
私は好き嫌いが多い。豆は何故か嗚咽がして嫌いだ、数の子はボリボリとしてて嫌いだ、もやしは白米と食べにくくて嫌いだ、きのこはシチューの邪魔で嫌いだ。キャベツは千切りが食べづらくて嫌いだ。特にもやしときのこは家ではよく出た。嫌だった。
親の調理は下手ではないどころか、とても美味しかった。それはわかっている。だが、私はとても選り好みが酷かった。
私は無意識のうちに贅沢な物を好んで食べた。菓子は美味しいと思って食べたものは高かった。外食で食べたいと思ったものは高かった。
裕福な家での生まれではないのに、私は金持ちのボンボンみたいなものを求めた。弟や妹はそんなことはなかったのに。
私は約束を守れなかった。時間を守れず、ルールを守れなかった。準備をしていたらいつの間にか家を出る時間が過ぎており、ルールを守ることは馬鹿馬鹿しいと一蹴した。私は自分のことしか考えられなかった。
私は今も、手に入らない物を求めては諦める。だが欲しがることを止めることはできない。
私は欲張りだ。
欲深い私 LieLie @rairai0014
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