第26話 神の討伐

 俺達は魔王の復活の発表を教室で聞いていた。そして勇者が召喚されたらしい。俺はそれを聞いて夢でのことを思い出す。


「皆さん、魔王が復活しました。」

「あの夢は、魔王だったんだろうけど、何で復活したんだ?」


 俺は小声で呟く。


「それにともない勇者も召喚されました。これからは魔族を勇者が狩ってくれるでしょう。もちろん私達も魔族を殲滅するのですが」


 俺達も魔族を殲滅するという話になっている。あの封印されていた魔族が邪悪なようには思えなかった。もし、ターガ達と敵対することになるようならどうしようとも思ったが、俺は魔族の方に付くことにした。


「エレン、どうする」

「私はあの人達と敵対したくない」

「俺もだ」

「ルーク、この国の人達と戦うの?」

「必要ならな。そのための強さだ」

「分かった私も付いていくよ」


 俺達は小声で話し、結束した。その日は授業の最初の方にターガ達に会いに行った。


「こんにちは。大丈夫ですか」

「ええ、みな魔族を化け物と勘違いしてるみたいで襲ってきません。平和にできていて何よりです」

「魔王が復活したっていう情報は知ってますか?」

「はい。あの方も大変ですよ。復活する度に何度も時の勇者に殺されているのですから」

「いたぞ。魔族だ」

「あれは、俺の元の世界のクラスメイト」


 黒髪黒目の集団がこちらを襲ってくる。それらを土属性の初級魔法ストーンバレットで一蹴する。クラスメイト達は銃弾の如き速さの土の塊が当たって殆どが気絶していた。


「俺が......相手だ」


 そして残った人間で出てきたのが佐藤神威と佐々木高次郎、乾桃花だった。その目から交戦は本意では無いようだ。


「お前が勇者も佐藤神威か」

「なっ。どうして俺の名前を」

「無抵抗な人達を襲うな」

「こうでもして魔王に人質を出して誘き寄せないといけないんだ。そうしないと」

「何を言ってるか分からないけどこの人達も人なの。貴方達と同じように生活があるのよ」


 神威は何か追い詰められている顔だった。それにしても俺とつるんでいた時とはまた違ったメンバーだ。異世界に来て芽生えた友情なのだろうか。


「神威くん。無理しなくていいよ」

「大丈夫だよ乾さん。俺はこんな奴に負けない」

『神威よ。あの相手は手こずるだろう。力をさずけよう。あの娘を殺されたくなければな』


 俺は俺を異世界に送った神らしき言葉を聞く。神威は神に人質を取られているのだろうか。


「これなら行ける。行くぞ舞、お前を助ける」


 神威の体と持っていた剣が輝きだしスピードも増す。舞とは天上舞のことだろうか。確か神威の幼馴染みだった筈だ。


「なら、これでどうだ」


 俺は火属性の上級魔法ヘルインフェルノを放つ。すると神威の光は燃えて消えた。


「ぐ、強い」

「なあ、神に弱みを握られてるんだろう」

「だからどうした。お前が知ったところで」

「俺は元の世界では来栖太陽だ」

「な、太陽だったのか。でも俺は無理なんだ」

『お前のことは見損なった。天上舞は殺させてもらう』

「なっ。やめろ。やめてくれ」

『他に勇者を召喚するとしよう。さらばだ』

「酷いな。これが神だと思ってた奴かよ」

「今の声、太陽にも聞こえてたのか?」

「ああ、それとこっちではルークだ。それにしても勇者ってこんなに使い捨てなんだな」

「前のときもそうだったようです。神はその絶望を見て楽しんでいたようですが何が楽しいのやら」

「そんなに簡単に勇者を何人も召喚できるのかターガ?」

「神にとってはのようです」


 その時魔王ユーライアが飛んできて空間にひびが入った。


『こんなに早く来るか魔王ユーライア』

「貴方を倒すために私は復活する。これ以上犠牲は出させはしない」

『天使よ私を攻撃させるな』


 神はそういうと天使の集団を呼び出す。俺はそれを火属性の上級魔法ヘルインフェルノで焼き尽くす。


『な、お前まで邪魔をするかルーク・ジルベルト』

「元の世界の親友をここまで落ち込ませて俺も怒ってるんだよ」

「ありがとうルーク。これでとどめよ」


 魔王は神に向かって真っ黒な槍を出して貫いた。


『ぐあー』

「終わった」


 そうして、神が貫かれたところで神威のところに天上舞が落ちてきた。神威はお姫様だっこで抱える。


「ユーライアさん。急にどうして来たんです」

「神の気配があったから。神は勇者の近くにいつもいるようになってるの。それにしても今回はありがとう。私一人で倒す筈だったけど」

「どうして貴方はそんな力を持ってるんですか。ルークみたいに強いし」

「長年倒されることで怨念が増してそれが力になってたの。それも晴れたからこの力は徐々に消えていく」


 俺達はこんなにあっけなく神が死んだことを驚いた。だが、それも魔王ユーライアの怨念の力らしく、それがよほどたまっていたらしい。それはともかく神威が舞を抱えている。そして、舞は目を開ける。


「神威?」

「舞!」

「舞ちゃん!」


 神威達は舞を取り戻せたようだった。これで幸せな終わりだといいのだが。


「ルーク君、私はクオーク王国に領土を持っててね。封印を解放してくれた魔族達はそこで養うことにするわ」

「そうなんですか。でもどうやって」

「私はちょっとした信仰を集めているのそういう家系があってそこで貴族として振る舞える感じ」

「良かったですね。これで神もいなくなったし安心な気もする」

「そうね。あの神には犠牲者が沢山いた。でもこれでこの世界も自由になる」


 こうして、神がいなくなり脅威と呼べるものは俺にとっては無くなった。その後エレンや他の仲間達と学園生活を送り卒業する。卒業後はクオーク王国に行って爵位を授与された。そして俺はエレンと共に領に住んでいる。


「ルーク。私、妊娠したみたい」

「そうか。子どもの名前何にしようか」

「どうしようかな」


 俺の強さに裏打ちされた平和な時間は流れていく。今後も俺はエレンだけでなくこの領や子ども達を守っていく。俺やエレン、子ども達のために。


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俺は幼馴染である悪役令嬢を守るため奮闘する 禿鷹吟 @akumanoko9777

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