第84話 

《sideアビス・メフィスト》


 物心ついたとき、私が一番最初に目にしたのは、男性の姿だった。


 父? であったのかなど覚えていない。


 その手は大きくて温かかった。包み込むような優しく太い腕に抱き上げられて、私は安堵した。


 この腕の中にいることが私の幸せなのだと確信を持ちました。


「アビス様」

「どうしたのです?」

「男神降臨の進捗状況は50%を超えました」

「あら、随分と早いじゃない?」

「はい。前回のレオガオン・ハインツよりも、今回の方が適正値が高いと考えられます」

「ふふ、そう。そうだったのね」


 本当はレオガオン・ハインツが一番適した男神を降臨させる器だと思われていたのに意外な幸福だわ。まさかクロード・ダークネス・ヤンデーレがここまで男神との適正値が高くなるなど考えてもいなかったわね。


「嬉しい誤算ね。そうそう、久しぶりにご褒美をあげないと可哀想かしら?」

「すでに精神は……」

「そういうことではないのよ! 理想の男神様が降臨してもらうために肉体にもご褒美は必要なの」


 クロード様は、ご自身の部屋で休まれていた。


 その部屋に無遠慮に入って、私はローブを脱いで裸になる。


「あっ!」

「クロード様、お加減はいかがですか? どうぞ私の胸をお使いくださいませ」


 窓際でソファーに座っているクロード様の前に立って全てを晒す。

 

 腕が伸びてきて、私の胸に手が伸びる。


「ふふ、お可哀想なクロード様、愛しております。アビス・ネフィストは全てをかけてクロード様をお支えしますからね」

「あっああァァァァっァァあっァァぁァァァァあぁ」


 赤ん坊のように泣きじゃくるクロード様を私は優しく頭を撫でて宥めていく。

 精神操作とはリラックスと緊張の間にこそ入り込みやすい。


 リラックスしている睡眠状態は、精神操作をしやすい。

 逆に興奮して疑っているときは、精神操作をしても操り難い。


「可愛い坊や。あなたは誰よりも優れた人で、誰よりも私の愛しい人よ。どうか落ち着いてお眠りなさい」


 リラックスさせるように子守唄を歌って、胸の中で眠らせる。


「ふふ、本当にお可愛いことで……。そして、お可哀想な人」


 眠っているクロード様を放置して、私は自分の体を洗ってから部屋を出た。


「あなたは?」

「これはこれはアオノ・ハーラー・マックーロ様、ミドリ・ムー・カーン様ですわね。私はアビス・メフィストと申します」


 クロード様のお部屋から出て来たのを見られたのは面倒ですね。


 お二人はクロード様の婚約者という立場で、クロード様をあんじておられるのでしょうね。


 ですが、お二人はマシロさんに負けた存在。

 パートナーと選ばれなかった二人です。


「ふっ」

「なっ?!! 貴様、何を笑っている!」


 好戦的なミドリ・カーン様が怒鳴って来ますが、全く怖くないですね。


「申し訳ありません。負け犬のお二人が今更何の用があっていらしたんだろうと思いまして」

「あなた、何を言っているんですの?!」


 プライドだけが高いアオノ・マックーロ様。


 どちらも実力不足ですね。


 私の相手をするのには……。


 生贄としての価値もない存在ですが、少なくても足しにはなるでしょう。


「良いでしょう。あなた方を素晴らしいクロード様の贄として献上しましょう」


 私は二人に精神魔法をかけます。


 疑りこちらを警戒している相手ですが、問題はありません。


 精神を壊すことだけに特化して使えば、相手への気遣いが必要ないのですから。全てを壊してしまえばいい。


「ああァァアッァァァァァァっ!!」

「ふふ、お可愛いわね。無駄な抵抗をするなんて。我が悪魔の囁きは、何人たりとも逆らうことはできないのよ。あなた方が光を生み出すような存在でもなければいね。ふふ、ふふうっふふうふふふふふふふふふあはははっはははははっははははははは」


 私はクロード様の部屋に裸の二人を放り込んで、あとはクロード様のご自由に。


「ふふ、あなた方も幸せでしょ? クロード様にその身を捧げれるのですから。望んでいたことを叶えられるので、肉欲に溺れなさい」


 私は魔力と精神を使ったことで、疲れてしまいました。


「あら、キャサリンじゃない? こんなところでどうしましたの?」

「アビス様、私は自分の力でカグラとマシロを倒したいと思いました。そこで手出しは無用をお伝えに来ました」

「あら、そうなの? ふふ、あなたも頑張るのね。応援しているわ。だけど、あの二人はクロード様の贄になることが決まっているから、ほどほどにね」

「はい! もちろんです。その際には献上させていただきます」

「とてもいい子ね。それで?他にもあるのでしょ?」


 キャサリンは他のことと違って従順なだけな信者ではない。


 自らの野心が強くて、私に匹敵する力を持つようになると思っているわ。


「はい。今後アンディ様に関わる信者を全て殺してしまうかもしれないので、どうぞ引かせていただければ嬉しく思います」

「へぇー、私に命令するのかしら?」

「いえいえ、お願いに参っただけです」


 アンディウス・ミルディン。候補には上がっていたけど、そこまでの重要人物ではない。


「いいでしょう。あなたの好きになさい」

「ありがとうございます!」

「ただし、あなたが不甲斐ない時には……ね」

「もちろんです」


 最後まで私の前で笑顔を貫くなんてやるじゃない。


 ふふ、興味はなかったけど、少しだけアンディウス・ミルディンに興味を持ったわ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 すみません。更新が遅れております。

 モチベーションもあるのですが、他の作品に力を注いでしまっているのが現状で、申し訳ありません。


 不定期更新にはなりますが、更新は続けていこうと思っております。

 どうぞ、お付き合いいただければ幸いです(^◇^;)

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俺の親友は悪役貴族。 イコ @fhail

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