あとがき

 物語前半は力などよりむしろ人生で必要となる人間関係について、後半は本来の意味での転生がある前提の世界観と、その教えで説かれている物事の解決方法について語りました。

 ハッピーエンドにしなかったのは、転生を説く教典に書かれている類の争わぬ解決法(本作の場合、嫌な奴への対処法)を信じる者が現実に少なく、その終わらせ方にリアリティを感じなかったからです。争いを望み、力を頼りとする人(今は争いを望まなくとも、自分が力を得たならそれを利用しそうな人も含む)がもっと少なかったのならば、抵抗なくハッピーエンドで物語を終わらせることができたと思います。

 もちろん憎い奴を力で叩きのめす、あるいは論破して嫌な奴を改心させるような物語が好まれるのは僕も重々承知しています。

 が、人を憎んで不幸になる者は山ほどいるが、幸せになれた奴の話は聞かない。嫌な奴になればなるほど、それを改心させるは至難のわざ。

 一時の憂さを晴らすには適していても、それを信じれば信じるほどに、憧れれば憧れるほどに現実が不幸に傾く物語を、僕は書きたくないのです。

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