使命
「強い覚悟が決まっているのですね。……彼もそうでした。あなたのお父上、今は亡き真の父上"アペイル・ユーピテル・ブラフマー・アマテラス"は、かつてこの世界に潜んでいた魔王、支配神"エレンホス"を封印した古代勇者なのです。つまり、あなたは、古の勇者の意思を継ぐ末裔なのですよ。」
一発では頭に入り切らなかった。
あえて名前が長過ぎることは突っ込まないでおこう。しかしだ。
まず、自分の真の父親だって?自分の父親はあの魔法科教師の村木恩分だ。
アペイル・ユーなんとかなんて名前ははじめましてだ。
さらに、万が一、そいつが自分の父親だとしたとき、時系列が合わなすぎる。
自分の父親なのだとしたら古くてもせいぜい数十年くらい前の話だろう。だが、そんな魔王だの何だのの話はこれまで全く聞いたことがない。
「信じられないのも無理はないと思います。あなたは、過去の記憶をすべて封じられています。さらに、あなたはアマテラスによってあなた自身を魔王の手から守るため、"時の大河"に流されていました。しかし、何があったのか、こちらの世界へと流れ着き、"村木 守"として暮らしているのですから、もう過去の記憶が戻ることは、無いに等しいでしょう。」
「じゃあ、証拠はどこにあるっていうんだよ。」
この神が言い切ったとき、俺は食い気味に強くあたってしまった。
そんな事はあるわけがない、絶対にない。そう思っているはずなのに、何故か自分の目元には涙が流れていた。意味のわからない話、なぜか流れる涙、そして、意味のわからない困ったような表情をしている眼の前の神の存在。その全てにいらだち、そして僅かな
「あなたはこちらの世界で言う魔法暴走者、メトロライターの一人、しかし他の魔法暴走者とは違ったでしょう。普通の魔法暴走者は魔力が多すぎるだけで、コントロールができたものはいない。しかし、あなたは他の者よりも魔力コントロールができる。さらに、先程の光鎮めのように他人の固有魔法を使用できていた。古の勇者、アマテラスと同じ、神盟帳との、"神々との契約の証"です。それが、あなたがアマテラスの息子であり、古の勇者の意思を継ぐものであるという証明になります。」
僕は話を聞いたときに、未だに半信半疑ではあったが、少し心のどこかで「たしかにそうなのかもしれない。」と思っている自分がいた。
「先ほど神盟帳の中の魔力が暴れていた理由、それは恐らく、これが原因だと思います。」
そう言って光の神は一つの漆黒の卵のようなものを持っていた。呪力が漏れ出ている。神がこれを出した瞬間、僕の心は恐怖と好奇心で揺れていた。
「この卵は、新魔王候補の卵のうちの一つです。魔王というものは、そのときの魔王が討伐されたあと、次世代の魔族を統べる魔王候補生の卵がいくつかできます。そしてそれらが、永い時間をかけ、孵化する。というわけですが、実は今、封印された"前"魔王、エレンホスの封印が解けつつあります。そして、何よりもどういうわけか、この次世代の卵の一つがこの図書室内にありました。そして、この闇の卵に反応して、神々の調印がある"神具"、神盟帳は"覚醒"したのです。」
そして間を開けて神は言った。
「アマテラスの意思を継ぐもの、村木守。今、永き時を眠り続けていた私には、この卵を封印できるほどの力も戻っていません。しかしあなたなれば……勇者の命を次ぐあなたなればそれも可能です。この卵を封印してください。そして、わたしたちの因縁の敵、魔王を討伐する仲間になってください。」
その口調は穏やかであったが、どこか、緊張感のあるような、圧迫感のあるような、重く鋭い声質だった。
しかし、自分には聞かなければならないことがあった。
「状況はわかった。けど、聞きたいことがある。」
「聞きたいこと……私に答えられることであれば答えましょう。」
「1つ目、なぜ、恩分はそのことを黙っていたのか。そして2つ目、僕は一体何をすればいいのか、できるのか。それくらい知っていても当然だろう。」
「たしかに、おっしゃる通りですね。では、お教えしましょう。」
その後、少し間をおいてから神は言った。
神盟帳 sun-333333 @sun-333333
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