第117話 冬の学園生活

今は二月。


二学期。


季節は当然に冬……北半球だからな、ここ。


今日も寒く、雪がちらついている。


だがしかし、学園の建物内は、暑いくらいに暖かい。


何故か?


「エグザス、貴様が城のような店で売っている『家電魔導具』の『エアコン』は凄まじいな。冬暖かく、夏は涼しい。持病の膝痛も楽になるというものよ」


通りがかりの、数学科のゴート先生が言うように、学園にもついにうちの会社の製品が導入されたからだ。


エアコン、照明、洗濯機とウォーターサーバー。


自販機も置いた。


中世ヨーロッパ風の世界、住民なんて皆土人だなんてバカにしていたが……、そうでもない。


黒曜石の槍でライオンを狩ってそうな南米部族でも、コンピュータやSNSが流行しているなんて話は、聞いたことはあるだろう?


むしろ、普段はジャージを着てスニーカーを履き、スピーカーで流行の歌を流しつつ炭酸ジュースを飲んで、ダンスをして動画を撮り、それをSNSにアップロードしていて……。


そして、観光客が来た時だけ、わざと獣の革を被り、槍を持ってジャンプする……。そんな部族もあるらしい。


それと一緒。


愉快なおもちゃや便利な道具は、土人でも使い方をすぐに学ぶのだ。


第一、ユーザビリティは高めてある。


売っているゲームもそうだが、チュートリアルを充実させて、文字の読めないカスのノーミン共でもゲームを楽しめるようにしている。


家電もそうだ、バカなこの世界の連中は、どうせマニュアルなんて読まん。起訴リスクも考えなくていい。


だから、機械に直接、ピクトグラムや簡単な文字を入れて、説明なしでも使えるようにしてある。


おかげで家電魔導具のデザインはクソダサいぞ。我が社の恥だな!


で……、学園。


通路の端にずらりと並ぶ自販機、その「ホット」の欄にある「ハチミツレモンジュース」を、生徒のガキ共が買っていく。


「これ美味しいよね!」


「いや、リンゴのジュースだって!」


「あまーい!」


飲料のラインナップは、中世人共は理解の及ばないものは怖くて口に入れたがらないため、基本的にはフルーツジュースの類だ。


しかし最近はサイダーも売れているというデータがあるな。サイダーのフルーツジュース割りが今巷で流行しているんだとか。タピオカみたいなもんらしい。


一方で、食料品の自販機もある。


スナック菓子、菓子パン、惣菜パンなどを陳列。


「私、朝はこのドーナツってお菓子に決めてるの!」


「私はこの、クリームが入ったケーキ!」


「僕は肉と野菜の挟み丸パン(ベーグルサンド)かなあ」


子供達どころか、教員も買っていく。


まあ仕方ない、この世界のパンより美味いので……。


そう言えば、ラーメンやハンバーガーなどを温めて提供するタイプの自販機はまだ作っていないな。


ほら、あの……、日本のパーキングエリアとかにたまにあるやつ。


あれは面白い見た目だし、味もそこそこ。


魔法による在庫自動補充と物質創造、そして殺菌魔法を組み込めば、日本の本家大元よりうまい食事を提供できそうだ。


そんな風に、新商品のアイデアを練りながら歩き……、教室へ。


教室の天井には、埋め込み式のライトがあり、冬の寒空、雲の下の建物の中でも、明るい。


クルジェスのジジイの授業……今日は座学だ、授業を受けて、この世界の戦術の勉強。


しかしそれだけではなく、二学期では、新たに俺が広めた『新式魔法』を使っての「新たな戦術作り」を行うことになったらしい。これが、今年度の期末テストの代わりなんだとか。中間テストもなくなって、期末一本でやるとのこと。


今は、学園とは別口の研究機関である『学院』や、軍隊に貴族家の多くでも、俺が齎した新式魔法の使い方を考えているらしい。


なので学園も新式を学び、新式の使い方に習熟した上で更に、新式を使った新たな戦術を考えろ、と。


そういう話になっているようだ。


今や、学園の半数が俺のシンパか手下。もう半数も、敵対しているとはいえ、親経由でもらった新式の使い方マニュアルを得て、新式を使うようになっている。


誰がなんと言おうと無駄、最早、新式の普及は止められない……。


だが、良いことばかりではない。


このままでは、この最強の術式である「新式魔法」は、海外に流出してしまうのだ。


何故か?


その答えは簡単。


この国の貴族がアホだからである。


国家機密を守れるような貴族は、いない。


貴族家一つの家伝とするならば、まあ、守れるかもしれないが、ほぼ全ての貴族に「新式魔法」が普及した以上、どこからかは確実に漏れる。


なので、漏れる前に、こちらで新式の使い方や活かし方を考えておこう、と。


そういう話だ。


なんでも来年には、世界中の魔導師や王侯貴族が集まっての魔法大会……のような軍事演習があるからな。


なんかそういうのが定期的にあるんだとか?意味不明だな、相変わらず。


とにかく、その大会に向けて、新式魔法のシェイプアップを急げとのこと。


そこもおかしいよな、新式は確かに凄いが、一年で実用レベルまでシェイプアップできると思ってんのか?


軍隊の装備を全て更新して、「来年までに使えるようにしておいてね!」って言ってるようなもんだぞ。アホかな?アホだったわ。


「……よし、座学はここまで!次は、野外にて新式魔法の練習とする!」


「「「「はい!」」」」


おっと、次の授業か。


俺は、実技の方はあまり出席しない。意味がないからな。


「おい、ジジイ」


「クルジェス先生と呼ばんか、馬鹿者」


「俺はこれから仕事だ。次の授業は出席したことにしておいてくれ」


「まあ……、ええわい」


クルジェスのジジイも止めない。


そもそも、新式魔法……教材そのものを作った人間に使い方を教えて意味あるか?って話だ。ビル・ゲイツにパソコンの使い方を教えるようなもんだしな……。


「あっ、エグザス様〜!すみません先生、私も行きます!」


そして、秘書のエイダもついてくる。


さあ、仕事仕事……。

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プログラマ転生〜この世界の魔法はプログラムらしい〜 飴と無知@ハードオン @HARD_ON

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