〜第1章〜 第7話 住込生活

「すみません。部屋、空いていますか?」


 2階のカウンターに小柄で美人な方が1人で居た。


「はい、ギルドホステルへようこそですぅ!担当のラピィと申しますぅ!お部屋空いていますよぉ!おひとり様ですかぁ〜?」


 そう癖のある喋り方で、にこやかに言いながら迎えてくれた。


「そうです、1人なんですが…料金を聞きたくて…」


 ラピィさんがニカっと歯を見せて笑った。


「ですとぉ1泊なら210ダル、2泊以上ですとぉ1泊160ダルでご案内できますぅ!1泊ですとぉ帝国内の他の宿屋の方がお安いですがぁ、2泊以上ですとぉ他より20ダルお得に宿泊可能ですぅ〜!」


 なるほど。さすが帝国レベルの値段だなぁ。他の宿屋は1泊でも連泊でも180ダルが相場ってことか。お金貯まるまでこちらでお世話になるか。


「しばらくお金貯まるまでお世話になりたいので連泊したいです!」


「かしこまりましたぁ!それでは1泊目なので210ダルいただきますぅ!」


 言われた通り210ダルをカウンターに置く。

 ラピィさんがまたニカっと葉を見せ笑いながらお金を受け取った。


「それでは、こちらになりますぅ〜!」


 ラピィさんに手を引かれながら案内をされた。意外と積極的なラピィさんに少しドキドキした。


「こちら12号室をお使いくださいなのですぅ!」


 少し奥の部屋へ案内された。第一印象は正直狭いし天井は筒抜けだし、さすがホステルというだけはあるな…。

 私の思いは心に留めておく。今日一日中動き回ったからお腹も空いた。荷物をベッド上に投げ捨て、1階の酒場へと向かった。


「意外と人がいるんだなぁ。何食べようかな…」


 酒を飲みつつ…と言いたいところだが、お酒は飲んだことがない。変に飲んで酩酊したらシャレにならない。ごはんだけ頼もう。


「ドマニの姿焼き…、ライトドンの目玉煮…、ピングザンの顔のフライ…。ゲテモノが多いなぁ…。」


 メニューを見てみて心が沈んだ。


「ペアルーの肉フライ、クチュドラの刺身、ママリーサラダ、カバルーの焼肉。この辺は食べれそうだなぁ」


 なんだろう。ペアルーとカバルーの絶対的信頼感は。安心できる。


「すみませ〜ん!」


「はい〜!なにに致しましょうか?」


 フレッシュな若い男性が来てくれた。


「ペアルーの肉フライと、ママリーサラダ、それとルイデルをひとつずつ下さい!」


「わかりました!全部で320ダルになります!」


 おお、結構な値段だな。でも今日ぐらい贅沢は良いだろう。私自身が許す!

 320ダルを支払い、私は料理が来るまで待った。


「キミ、ひとり?」


 突然、ビールっぽい飲み物片手に隣の椅子に腰掛けた男。その身なりから、そこそこのクエストをこなしていそうな雰囲気を漂わせている。


「あ、はい、ひとりです。あなたもひとりなんですか?」


「俺はパーティーを組んでいるからひとりじゃないよ?ああ、ごめん、自己紹介まだだったね。俺の名前は『カズダム』。キミは?」


 ちょっと馴れ馴れしいが、せっかく声をかけてくれたから無下には出来ない。


「私は、ハルト・アヴェといいます。…パーティーってことは他に何人居るんですか?」


「俺の他にあと2人の3人パーティーさ。ところでこの辺で見ない顔だけどどこから来たの?」


「カルタ村から来ました。モンターニュ公国へ目指すのに資金集めをしているところなんです」


 また東京とか言うと話がややこしくなっちゃうからカルタ村の名を借りた。


「結構遠いとこから来たんだね。実はパーティーを1人募集していて、1人で居る人を声かけていたんだ。俺らも次の街へ行く準備としてお金を貯めておきたくて」


「そうだったんですね…」


 私はそう答えて先ほど運ばれてきたルイデルをすすった。

 男はそれ以上の回答を待つかのように笑顔で私の顔を見続けた。


「…わかりました、わかりましたよ。良かったらパーティーに入っても良いですか?」


 …沈黙は嫌いだ。私は観念した。


「そうこなくっちゃ!明日からよろしく!」


 カズダムは笑顔でそう答えた。半ば無理矢理感は否めないが…。

 明朝、ギルドの入口に集合とのことで、今日は早めに床についた。


 朝日が顔を出したと同時に私は起きた。


 ある程度身支度を完了させ、すぐ下へ向かった。




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ディアフォース・ストーリー 朝空 檸檬 @asakararemon

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