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 警察署を出た私と祖母は、横に並んで歩いた。理由は単純で、その方が祖母の姿を見なくて済むと思ったから。前を歩いて「ついてきてるだろうか」と振り返るのも、後ろを歩いて祖母のくたびれた背中を見るのも、どちらもごめんだ。「万引きぐらいでガタガタ言いなさんな」と力強く笑う、そんな祖母であって欲しかった。


 祖母のアパートが視界に入ってきた頃、等間隔に並んでいる電柱に例のポスターが貼られているのを発見した。私は祖母に見せつけるように、『迷子の子犬を探しています。名前はココちゃんです』をべりりと剥した。

 祖母は怯えた子供みたいに瞳を潤ませている。私は彼女を安心させるために、そのポスターをくしゃくしゃに丸めて近くのごみ箱に捨て去った。そして、スマホに登録していた電話番号を消去する。


「お腹も空いたし、帰ろっか。マロンも待ちくたびれているよきっと」

 祖母の全身を覆っていた緊張が少し緩んだように見えたのは、気のせいだろうか。私たちはゆっくりと家路を目指した。

 アパートに到着すると、私たちの存在に気付いたマロンがドアの向こう側から吠えていた。濁音交じりではなく、キャンキャンに近い「ワンワン」が、静かな夜に響いていた。

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