【ショートストーリー】時の狭間で

T.T.

【ショートストーリー】時の狭間で

 ある晴れた日曜日、僕は昔ながらの書店の片隅で一冊の本に出会った。その本は「時の狭間」と題され、著者名は不明だった。この本を開いた瞬間、僕は異世界へと引き込まれることになるとは、このときはまだ知る由もなかった。


 家に帰り、私はその本を開いた。すると、突然の光に包まれ、気がつくと見知らぬ部屋にいた。部屋はレトロな雰囲気で、壁には未来的な風景が描かれた絵がかけられていた。そして、そこには一台のタイプライターがポツンと置かれている。


「ようこそ、時の狭間へ」と背後から声がした。振り返ると、そこには老年の紳士が立っていた。彼は「時間管理局」の局長だと名乗り、私が選ばれた「時の編集者」であると告げた。彼の話によると、世界の時間はこのタイプライターで書かれた物語によって紡がれており、私は新たな物語を生み出す役目があるという。


 しかし、一つのルールがあった。書かれた物語は現実に影響を及ぼすため、慎重に物語を紡がなければならない。そして、私がこの部屋から抜け出すには、完璧な物語を一つ書き上げることが条件だった。


 私はタイプライターに向かい、考えを巡らせる。何を書けばいいのだろうか。そこで、私はこの体験をモチーフにした物語を書くことに決めた。指がキーボードを打つ音が時空を超えて響き渡る。そして、物語が進むにつれ、周りの世界が変化していくのが感じられた。


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 物語は、時空を自在に旅することができる青年、トマスの冒険から始まる。彼は時間管理局から特別な力を授かり、時を越えて人々を助ける役目を与えられた。しかし、トマスには一つだけ守らなければならないルールがあった。それは時間旅行を通じて自分自身の運命を変えてはならないということだった。


 ある日、トマスは過去の時代で美しい女性、エリザと出会う。彼女はその時代の厳しい生活に耐えながらも、明るく生きる強い女性だった。トマスは彼女に心から惹かれ、何度も時間を越えて彼女に会いに行くようになった。


「あなたは、どこから来たの?」

 エリザが問いかけると、トマスは微笑みながら答えました。

「遥かな未来からだよ、エリザ」


 その後も、彼らは様々な話をする中で、お互いの人生観や夢、恐怖、愛について深く理解し合いました。

「私たちは違う時代の人間だけど、心は繋がっているんだ」

 トマスの言葉に、エリザは深く頷いていました。


 しかし、エリザの時代で起こる大災害を知ったトマスは、彼女を救うために自分の運命を変える決断をする。


「エリザ、私たちの時間はもう長くない。大きな災害がこの地を襲う。だから君を未来へ連れて行く」


 エリザは驚き、混乱するものの、彼女はトマスを信じて決断を受け入れました。


 彼は時間管理局のルールを破り、エリザを未来へと連れて行った。その結果、時間が混乱し、世界は崩壊の危機に瀕した。


 トマスは自分の過ちを悔い、時間管理局とともに時間の修正に奔走する。彼はエリザを彼女の時代に戻す決断をするが、それは彼女を災害へと送り返すという選択でもあった。だが、エリザはトマスの決断を理解し、彼女自身の運命を受け入れる。


 トマスは涙ながらに告げました。


「エリザ、君を未来へ連れてきたことで、時間が混乱し、世界が危機に瀕している。だから君を元の時代に戻さなければならない。ごめん、エリザ……」


 エリザはトマスの決断を受け入れ、彼に対して言いました。


「トマス、ありがとう。あなたと出会えたこと、未来を見ることができたこと、それら全てに感謝しています。これが私の運命なら、受け入れます。だから、あなたも自分を責めないで」


 彼女は微笑みながら過去へと帰っていった。その後の彼女の消息は杳として知れない。

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 数時間後、私は最後のピリオドを打った。すると、光が再び部屋を包み、私は元の世界へと戻っていた。手元には「時の狭間」と題された本が。しかし、今度は著者名に私の名前が刻まれていた。


 時を超える物語を紡ぐ旅は終わったが、僕の中に新たな物語が生まれる予感がしていた。それは、また別の日曜日のことかもしれない。


(了)

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