エピローグ 使命感?笑っちゃう


 私は学院に与えられた自分の部屋に備えられたソファの上に寝転んでいた。


 グロテスクな悪霊との対峙。

 こんなことが繰り返されたら、私の精神のほうが壊れる。私がつぶれる。


 まさか、この国に、国家機密の『悪霊を祓う専門の機関』があるとは。想像すらしていなかった。巷にあるお祓いは、いわゆる霊力がある人たちが仕事としてやっているが、あれもそれなりに力がある者もいるため放置しているらしい。


 ようはささやかな悪霊は一般人に任せているという現状。

 

 祓う家系に生まれた人間には、国民に平等に与えられたはずの自由がなく、職業の選択肢がない。血を受け継いだ者で異能が発現したものは、有無を言わせず「天武」に所属し、日本全国にある支部に配属される。


 なぜそんなにも、純粋に向き合えるのか。

 力があるから使命感が生まれる? 

 それとも幼き頃からの指導で、洗脳されたままなのか。

 

 私が迷うのは洗脳されていないから?

 最初から貴方の道は「祓う」人生だと洗脳されたほうが生きやすかった?


 私には、例えば蒼人のような、使命感はない。


「咲、行くぞ。」

個室のドアがノックされ、蒼人が部屋に入ってきた。

「いちお、女性の部屋。づかづか入るの非常識かと。」

「一緒に行こう。」


 それ、「一緒に逝こう」って意味じゃないよね?と、心の中でぼやきながら、私は蒼人にひっぱり起こされた。


 まだ私の祓う人生は、始まったばかりだ。

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正義感なんてないのに、強制的に「悪霊退治」させられています! saku @nanashibook

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