第2話

 「聞きたい事は山ほどあるが、今はそれどころじゃないな。フラム、衛兵以外は全て地下に避難させてくれ。まだ他に仲間がいるはずだ。」

 

 「承知しました。クライン様も危険になったら1階の書斎まで来てください。部屋の前には私が立っていますから。」

 フラムは言い終えると同時に扉を閉めた。


 「行くぞ、エマ・クライン。奴を捕らえる為にお前の力を借りたい。」

 振り返ったが、部屋にエマの姿は無い。


 「えっ......まさか、おいあの娘!!」

 フリードが窓の下を覗き込むと、外でエマがうつ伏せに倒れていた。


 「何やってんだ!!!ここ2階だぞ!!!」

 叫ぶフリード。


 「大丈夫です!!!腹から落ちたので!!!」

 銀色の胴体を見せて答えるエマ。自慢げにサムズアップまでしている。


 「はぁ......俺も今から向かう。そこで待ってろ!良いな!」


 フリードが走って部屋を出ていくのを見届けたエマは、服についた草を振り払っていた。


 「無感情なつまんない人かと思ったけど、案外普通に怒ったりできるもんだね。」


 「アンタもそろそろ起きた方が良いんじゃない?誰だったっけ??」


 地面に横たわっているウィンストンに声を掛けるエマ。2~3秒ほど沈黙が続いたが、やがてウィンストンは立ち上がった。


 「なんだ、バレてんのかよ。」


 「当たり前でしょ。気絶してるかどうかくらい持ち上げれば分かるっての。」


 「冷てえなぁ。こう見えて結構痛いんだぜ?顔もこ〜んなに腫れちゃって。まっ、良いさ。どうせ俺が勝つんだから。」


 そう言うとウィンストンは背中に隠し持っていた杖を取り出した。


 「杖!?確かに奪ったはずじゃ!!」


 「杖が1本しか無いなんて誰が言った?さっきのよりは一回り小さいが、お前をぶっ倒す程度ならこれで十分だろ。」

 ウィンストンは笑いながら杖を構える。


 「それ、本気で言ってる?あんなそよ風で人が倒れるとは思えないけど。」


 「遺言はそれで良いか!!!捕縛風ウィンディケージ!!!」


 エマの体が強い風で覆われていく。前後左右から強風で押され続けていて、抜け出せそうにはない。


 「ぐっ......最初からこういうの使ってれば良かったんじゃないの......!」


 「悪いな。あのクソ男のせいで気が立ってた。あとは眠っててくれ。睡眠魔法シュラーフェン!」


 その瞬間、ウィンストンの右肩を一筋の光が貫いた。


 「ぐはっ!!!!!!」

 崩れ落ちるウィンストン。


 「間に合ったか!?」


 フリードが持っていた杖は、見た目こそ杖だったがその大きさは180cmを優に超えていた。一般的な杖を鉄砲に例えるならば、彼の杖は大砲である。


 「え......何......それ......」


 睡眠魔法によってエマは眠りに落ちたが、彼女を覆う風は消えていない。ウィンストンはまだ生きている。


 「ウィンストン・リーヴス。最期に聞かせてもらおうか。お前の......いや、の目的はなんだ?」

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機械少女と没落貴族〜無能力者の下剋上〜 おもち丸 @snowda1fuku

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