ミシュナ視点4:この感情に名前を付けるのは、彼女のことを助けた後で
これが、僕のどうしようもない馬鹿な話。
僕は、世間知らずで、賢くなくて。
ほんの少しだけ出会ったあの人をどうにか助けられないか、ずっと考えている。
彼女を生と死の狭間から助け出すことが、できないかと。
オルビドとの対話で、一つだけはっきりしたことがある。
(鬼と魔が呪いに対抗できる存在なのは間違いない)
魔…魔人族に関しては、異常なほどに悪感情が撒かれている。これも何かの悪意だろうか?
(あの子を知るには、ハンク家を知ればいいと思ったけれど)
忌まわしき2族についても情報が欲しい。
僕はどうしたって情報をかき集めるしかないんだ。
(あと、気になる事がある。オルビドはキリウスらって言った。……他にも憑依先がある?)
生家にいる妹の周辺で起きた怪異現象。
幼子だけで切り抜けられるものじゃなかった。
(妹に……サトラにも憑依した?そして、守った?もしもそうなら、僕は彼女に何も出来ていない……)
オルビドが話す事実の全てを、僕は信じていいのか?
(彼女に会えたら、ちゃんと伝えたい)
妹を守ったのはあなたですか?って。
ありがとう、とも。
(情報が足りない)
僕が知りえる情報は限られている。
今、僕はどうしようもないことを理解してしまった。
(情報の……極限はどこだろう)
今までだって、勝手に限界を決めていた。僕は限界までやっていないじゃないか。僕の足搔きでそれが叶うなら構わないから。
とにかく知らなければならない。シルヴィアという女性のことを。
馬鹿な僕は知ってしまったから。
キラキラした笑顔に心躍らせる感覚、あまりにも美しい戦い方。
光のような彼女が、闇よりも暗い場所で戦い続ける現実に耐えられそうにない。
僕はまだ、何もできちゃあいない。
だから、僕は僕で足掻くしかないんだ。
(シルヴィア・ハンク……)
あの綺麗な笑顔の女性を知るためなら、何だってやるさ。
…………。
「ん?……まてまてまて」
僕は自分に言い聞かせる。
「いや……違うだろ!?」
持ってはいけない感情が生まれた気がする。
もしも、彼女がキリウスやサトラに再び憑依していたとしても、こんな想いを表に出しちゃあダメだ!!
色々と終わる……!!
僕は「はぁ……」と深いため息をついた。
∻∻∻∻∻∻∻∻
その夜、夢を見た。
夢は、眠りは、死に近いとされている。そのせいだろうか。
途方もない闇と戦うシルヴィアを見た。
あの時見た、不敵な笑みを浮かべて。
その手には闇を切り裂く光の刃を携え、因果の呪いへ告げるのだ。
「死ぬまで何度でも殺してあげる」
その一閃は淀みが一つもなく、美しかった。
英雄騎士の母は時々憑依し目覚め、息子の一助となります ユールヒェン・グラ @yuribeeim
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。英雄騎士の母は時々憑依し目覚め、息子の一助となりますの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます